「先調子」「中調子」「元調子」「先端が走る」「シャフトが弾いてくれる」等々、シャフトのしなりを感じないと、これらの言葉の意味は実感できません。
ビギナーはもちろん、90切り目前のプレーヤーでも、同じ悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
ここではその原因を深く掘り下げ、対策を講じ、しなやかなスイングを手に入れる方法を考えてみます。
シャフトはどう「しなり」「ねじれる」のか
ここではそれぞれ、やわらかくしなりやすく、ねじれやすいものを「L」、硬くしなりにくく、ねじれにくいを「X」として話を進めます。
アドレスからフィニッシュまでの間、シャフトは「縦、横、斜め」とさまざまな方向にしなり、シャフトを中心に「ねじれ」も発生します。
「縦」とは体の正面に対し上下、「横」を飛球線と同じ向き、「斜め」はその複合とします。
やわらかく簡単にしなり、ねじれやすいシャフトは、ヘッドスピードが遅い女性向けでしなりとねじれを利用し飛距離を稼ぐタイプです。
反対に硬くしなりにくく、ねじれにくいシャフトは、ヘッドスピードが速いローハンデプレーヤー向き、再現性は高いのですが、しなりを作るのに高い技術を要します。
各メーカの開発競争により、この「L」から「X」までの間に、さまざまな個性を持つシャフトが誕生し、プレーヤーの体力や技術、好みに応じた選択が可能になっています。
「X」に近くなればなるほど、しなりを感じないシャフトという事です。
参考までに、この先や元といったキックポイントはヘッド側から測って、全長の41%~45%くらいの所に集中しているそうです。
シャフトがしなる位置(キックポイント)による機能の差とは
同じ性能のヘッドを使用した場合、一般的にキックポイントが先端寄りにある「先調子」はボールの捕まりが良く上がりやすい傾向にあり、スイングテンポが早い方に向いていると言われています。
同時に、ヘッドが素早く動くため、タイミングがズレるとボールが暴れる可能性があり、ヘッドスピードの速い方が、スピード感を求めて先調子を使用する場合は注意が必要です。
そして「中調子」「元調子」は、スイングテンポがゆっくりの方との相性が良く、ヘッド軌道の再現性が高くミート率アップも望めますが、ある程度のヘッドスピードが必要で、女性には不向きかもしれません。
整理すると、ヘッドスピードがあまり速くない女性の場合、やわらかめで良くしなる先調子のシャフトとの相性が良く、ヘッドスピードが速いプレーヤーは、硬めでしなりの少ない中元調子が合うようです。
シャフトのしなりを感じないというプレーヤーは、極端にやわらかく先調子のシャフトが装着されたドライバーを振ってみるのも良い練習と言えます。
シャフトのしなりを感じないのは〇〇の関係
ヘッドスピードという言葉はなじみのあるものですが、『グリップスピード』と言われてもあまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
実は、このグリップスピードとヘッドスピードの関係こそが、しなりを感じる、感じないに大きな影響を与えています。
一般的に、クラブのしなりは、この差が大きければ大きいほど強くなり、小さければ小さいほど弱くなります。
力任せにクラブを振っても、ヘッドスピードとグリップスピードの関係が適正でなければヘッドは走らず、シャフトのしなりも感じない、距離が伸びないスイングになってしまうのです。
理想は、グリップスピードが穏やかで安定し再現性が高く、ヘッドの走りが良く飛距離が出るスイングです。
手首のやわらかさはシャフトをしならせる。しなりを感じない理由は?
手元(グリップ)を穏やかに動かしてもヘッドが走るスイングの鍵は、グリップを握る強さにあります。
適正なグリップ圧は、軽く絞ったおしぼりをゴルフグリップ同様に握り、インパクト付近以外は水がしみ出さない強さ、と言われています。
ビギナーゴルファーやアベレージゴルファーの多くが、高すぎるグリップ圧に気がついておらず、体力に見合った効率の良いスイングを実現できずにいます。
遠くに飛ばしたい、正確に当てたい、上手くボールだけ拾いたい等々の意識が混じると、手先に意識が集中し、知らず知らずに力が入っているのです。
硬く握り締めたグリップは手首の柔軟性を奪い、手元とヘッドにスピード差がつきにくく、シャフトのしなりを感じないスウィングになる原因の一つと言えます。
そこで適切な圧力のグリップを手に入れるためには、体の仕組みを理解する必要があります。
「尺骨軸回旋」を意識したグリップを取り入れると、このグリップ圧でも十分であることが良く理解でき、手首をやわらかく使うコツもつかめるはずです。
深いタメはシャフトをしならせるのか
適切なグリップ圧は、スイング中の手首をやわらかく動かし、クラブに無意識のタメを生み、結果としてシャフトをしならせヘッドを走らせます。
この結果として起こるクラブのタメを意識的に行うと、ほとんどの場合ヘッドが間に合わず右へのミスを誘発します。
むしろイメージとしては、やわらかく握ったグリップを飛球線後方へ押し出しながら左手掌屈、左腕の左回旋と右腕肘の解放と左回旋を行い、右腰前でリリースする、という正反対の動きが適度なタメを作るのです。
バックスイングから切り返した直後、グリップが体から遠ざかり飛球線後方へ向かい、胸骨の旋回から少し遅れて動き出す左右肩甲骨、この時間差が穏やかな手元の動きを実現します。
繰り返しですが、強すぎるグリップ圧は、手首の動きを鈍らせ、シャフトのしなりを感じないスイングを生んでしまうので要注意です。
シャフトのしなりを生む胸骨の先行と、しなりを感じない理由
先ほども少し触れましたが、シャフトのしなりを感じその性能を十分発揮させるためには、やわらかく動く手首と、それを可能にするための適切なグリップ圧が必要不可欠です。
アドレスの状態から左肩を下に落とし、上体の左側屈を伴い、左拳を右爪先に向け、掌屈しながら押し込み、右肩甲骨を後ろに引き上げた結果がテークバックからトップに向かうバックスイング。
切り返し付近の動きは、手元を飛球線後方へ押し出し体から離します。
切り返した直後の胸骨と左右肩甲骨の動きが作り出すごくわずかな時間差が、再現性の高い手元の動きを引き出すのです。
その結果、必然的なタメが生まれ、シャフトはしなやかにしなり、その性能が引き出され、クラブ性能通りの飛距離を生み出す準備が整います。
切り返し直後の手元は、真下に落とすのではなく、掌屈をともなった左尺骨軸回旋と、右肘の解放を右腰付近で終わらせます。
右腰付近で終わらせたリリースの後は、上体の右側屈をともなった肩の入れ替え、胸骨は左へ回転しますが、肩と肩甲骨は上下の入れ替えです。
インパクト付近の右手は、甲がボールに向かうほど左回旋しているイメージです。
シャフトのしなりを感じないとお悩みの方は、ぜひ取り組んでみてください。
「そんな振り方したら当たるわけない」「当たってもまっすぐ飛ばないよ」と思うでしょうが、これがゴルフスイングの本質なのです。
シャフトは必ずしなる
右手の甲がボールに向かうイメージが「インパクト付近の動きで、切り返し直後は手元を遠くに」と言われても、簡単には再現できないかもしれません。
また、見慣れない「左尺骨軸回旋」「掌屈」「胸骨の先行」「左右側屈」と、いろいろ出てきました。
この記事全てが上達のヒントで埋め尽くされています。
ぜひ、読み込み、ご自身の練習に取り入れてください。