ゴルフは道具を使う競技です。
その道具が進化すれば、その取扱いも同時に進化します。
誰しもが、より効率の良い打ち方を習得したいのは当たり前です。
その道具にあった正しい打ち方を実践することで、かなりのステップアップが期待できます。
「アイアンショットはダウンブローで打ち、ボールの先のターフを取る」
それが当たり前のように言われてきましたが、近年のアイアンやゴルフボールの進化は目覚ましく、以前のノウハウは通用しない時代になってきています。
古いアイアンの打ち方がダウンブロー
アイアンがまだ軟鉄鍛造加工しかなかった時代、当時の技術では重心位置、いわゆる芯が小さくフェイスのほぼ中央の高い位置にしか技術的に造れませんでした。
その代表的なものがマッスルバックです。
ヘッドは小さくロフト角は現在のものより3から4度ほど開いていていたので、飛距離を稼ぐために当時のゴルファー達は、ロフトを立てて上から打ち込むことで芯に当てる必要がありました。
その上ボールも糸巻きタイプで飛距離が出なかったので、強く打ち込むことでボールにスピンをかけてボールに推進力を与え飛距離を稼いでいたのです。
その結果、生まれたのがダウンブローの打ち方です。
ボールを最下点よりも手前で打つことで芯に当て、その後に最下点に到達するため、結果ボールの先の芝が削れる打ち方でした。
その後、ゴルフが一般に普及し始めたとき、アイアンはダウンブローでボールの先の芝をはぎ取るように打つことが正しい、というやり方がまことしやかに普及したのです。
重心位置が高いアイアンでダウンブローを打つ効果
では何故ダウンブローのショットが当時最も推奨されていたのでしょう。
まずは、そのように打たなければならないアイアンであることが前提です。
ダウンブローだとヘッドが落下している途中でボールに当たるので、フェースが少し下を向きます。
これは、インパクトのときにロフトが立っていることになります。
例えば9番アイアンのロフトは7番アイアンくらいになっているということで、そのために飛距離が伸びることになります。
ダウンブローの打ち方をマスターすると飛距離が得られ、バックスピン量も増えるのでボールは高く上がり、グリーンに落ちてもあまり転がらないためにピンをデッドに狙えます。
つまりショットそのものが安定して、ミスの許容範囲が広くなったということです。
裏を返せば飛距離や方向性を自分で調節できるということでもあります。
そのため、飛距離よりも方向性を重んじるプロはそういうアイアンを好んで使う傾向が強く、操作性の高いアイアンでダウンブローに打っています。
従来のダウンブローの打ち方
アドレスで構えた位置のボールにそのままコンタクトすると、構えたロフト通りの角度でボールは飛ぶことになりますが、古いアイアンは芯が小さく高い位置にあるために、地面にあるボールを打つ場合、スイープな打ち方だとトップのような当たりになります。
その上芯も小さいので上がらなく力のない打球になってしまいます。
ラフで浮いたボールでもない限り、ボールの下に隙間はないのでボールを芯で打つことはできません。
それらを解消するために、ダウンブローで打つことになるのです。
ただしダウンブローといっても特別な打ち方をしているわけではありません。
上から鋭角に打ち込むことと思いがちですが、ゴルフのスイングは円運動であり、それを鋭角に打ち込むというイメージを持ってしまうと、円運動の途中でボールに向かって直線的な動きになってしまいかねません。
そうではなく、円運動のダウンスイングの途中で先にボールを打つこと、つまりアイアンがダウンしながら打つのでダウンブローと言います。
ダウンブローは職人技的な打ち方
先ほど説明した円運動の途中でコンタクトするだけでは、仮のダウンブローのショットであり、飛距離は出ません。
ボールに勢いをつけるため体重移動からハンドファーストが必要になります。
体重移動は自転車の車輪が回転しながら右から左へ移動するイメージです。
体重移動しながら止まっているボールにコンタクトすると体は前に推進しているので、止まっているボールにコンタクトすると自然とハンドファーストになります。
これが打ち込んでいるように見えるのです。
つまり、正確なスイングプレーンとヘッドスピードで、適正な体重移動しながらボールにコンタクトするとても難しい打ち方、それがダウンブローという打ち方です。
良く理解しておかなければならないことは、この打ち方は古いアイアン、そのように打たなければならないアイアンで、飛距離や方向性を出すためのプロの技だということ。
決して初心者やアベレージゴルファーが一朝一夕にできるものでありません。
また、アイアンの全てショットがダウンブローで打つということでもありません。
近年設計のアイアンの打ち方にダウンブローは必要ない?
古いアイアンやマッスルバックの欠点を補い生産量も増える、ロストワックス精密鋳造というアイアン製造の進化によって、ソール幅が広く低重心で芯が広くなったキャビティアイアンが多数登場しました。
その後の各メーカーのアイアンとボールの進化は目覚ましく、重い金属と軽い金属を組み合わせて、重心の位置を調整したハイブリッドアイアン、重量配分や重心深度を深くするためソールが広く、打ち易さと飛距離を追求した中空アイアンも出てきています。
ソールが広く芯を低い位置にすることにより、地面を滑らすようにして、ボールをスイープに打つことができるようになりました。
その上、ゴルフボールも進化していて、スピンの効くボールも開発され無理に打ち込まなくても、必要なスピンがかかり飛距離が出るようになっています。
こういうことから、現在のアイアンを却ってダウンブローの打ち方で打つと、低い弾道になり飛距離を損することになるのです。
つまり近年のアイアンの進化には、今までのゴルフ理論は通用しなくなってきていると言えます。
低重心アイアンの打ち方はレベルブロー
低重心のアイアンは芯の位置も低くソールも広くなっています。
そのため上から打ち込むダウンブローと異なり、地面を滑らす様に打つことがこの低重心アイアンの打ち方のコツです。
この打ち方をレベルブローと言います。
インパクト前後でクラブのヘッドがボールに対して水平に動く軌道のことで、インパクトゾーンが点でなく線となってフェースが球を長く押せるため、より強い球が打てることになります。
レベルブローの打ち方はアイアンのロフトなりに構えます。
本来アイアンのロフト角は、正面から見てシャフトが地面に対して垂直な状態を基準に設計されています。
クラブのロフトなりとは、そのクラブのロフト角通りということで、構えたときにアイアインのフェースを飛球線の合わせ、グリップエンドがボールの上に来るくらいの軽いハンドファーストの形のアドレスになります。
そうして極端な体重移動はせず、ボールの真横を払うように叩くのです。
インパクトはまさに一瞬の間に起こるので、頭の中のイメージはそのように考えておくだけにしておきましょう。
アイアンの打ち方やスイング理論はゴルファーによって異なる
ゴルファーにはそれぞれ個性があり、同じゴルフ理論が万人に通じることはありません。
日本の一般ゴルファーはゴルフを会社の先輩から教えられることが多いのですが、内容は間違いだらけです。
アイアンのダウンブローの打ち方も悪しき慣習の産物となりつつあります。
まずは道具を知り使い方を理解して自分の体を知ること、そして自分に合った理論を見つけることが必要です。
一度試してできないことは自分に合っていません。
さっさと止めて次へ次へと試していきましょう。