アイアンのスイングを基本から見直し更なるスキルアップを

ゴルフスイングは1W、FW、アイアン、ウェッジまで、基本はすべて共通であると考えます。

今回はアスリートゴルファー向けに、スイングを各パートに分け、体の基本構造とその使い方を交え丁寧に解説します。

再現性の高い体幹を活用したスイングが身につけば、大きな重圧がかかった場面でも普段通りのショットが可能になり、スコアメイクが楽しくなります。

高重圧下で好結果が出ない理由は、スイングのちょっとした勘違いが原因かもしれません。

アイアンの再現性が高いスイングを支える適切なグリップの基本

アスリートゴルファー向けなので、クラブ構造についての解説は省きます。

まずはクラブヘッドの回転をスムーズに効率よく行うためのグリップ方法の解説です。

人の前腕は小指側にある尺骨という骨を軸に回旋します。

この尺骨軸とクラブシャフトの軸を揃えることにより、クラブの動きが管理しやすくなり、再現性を高めます。

手のひらを開き左右に回すと、中指と薬指の間あたりを中心に回旋していることが確認できるはずです。

ここが尺骨軸の延長で、クラブシャフト軸がこれに揃うようにグリップするのが基本です。

フィンガーかパームか、好みによりますのでご自身のしっくりくるほうで問題ありませんが、軸が直線上に揃い、左手の掌屈と右手の背屈を妨げないことが条件です。

この握りで、左手の掌屈と前腕の回旋を強く意識しながら軽く素振りをすると、驚くほどヘッドが回るはずです。

この際、左肘が少し曲がり左脇が開くくらい強く回旋させることがポイントとなり、それでも緩まない形を探しましょう。

この腕の回旋を支えるグリップは、アイアンだけではなくスイングの基本です。

次はアドレスです。

アイアンに限らずアドレスこそスイングの基本である

アドレスで最も重要なポイントは安定した下半身です。

パープレーで回ったと仮定すると72回のアドレスの中、練習場のような水平な場所はほとんどなく、気づかないうちに微妙な傾斜への対応を迫られています。

極端な傾斜地を除き、両土踏まずに均等だった加重が、切り返し付近は右かかと、インパクト付近は左足母指球へとスムーズに移動できる形が理想です。

番手により両足の幅は変化しますが、両膝は外に向け少し曲げ、骨盤を前に倒し股関節との間に角度をつけます。

腰から背中にかけてのラインは直線が理想で、反り腰は上体の起き上がりを誘発するので避けましょう。

この状態で両腕を自然におろし、手の甲が両爪先付近であれば荷重は土踏まず付近になるはずです。

両手のひらを向かい合わせ、左肩甲骨を上に引き上げ、右肩甲骨を下に押し込み、左右手のひらをずらしグリップの形を作ります。

その際、背骨が右側に傾きますが、意図的な傾きでなければ問題ありません。

鏡の前に立ち、顎の向きを変えずに左右への小さな足踏みと、両肩甲骨の開閉を伴った肩の上下動を繰り返し、安定感を確認してください。

アライメントスティック等を使用し、肩、腰、膝、踵の向きを確認し、自身の癖を覚えることも重要です。

このアドレスは、アイアンに限らず全てのスイングに共通する基本です。

次はテークバック始動について解説します。

上下の時間差がスイングの要となるアイアンショットの基本

フォワードプレスやチンバック、始動のタイミングは好みで問題ありませんが、小さな足踏みによる左右への荷重移動を取り入れることをオススメします。

ほんの小さな動きですが、左右肩甲骨の上下の入れ替えをイメージし、始動直後、左から右へ荷重が移動し始めたら左肩甲骨を下げ、右肩甲骨を引き上げる動作です。

これは左手を掌屈させながら右爪先方向へ押し込み、テークバックへという流れですが、重要なポイントがあります。

スイング始動直後、左右肩甲骨の入れ替わりをイメージしながら、右への荷重移動を感じたら、足踏み同様のタイミングで左膝を開き、左に荷重を移動します。

左肩甲骨は開き肩が下に落ち、右肩甲骨は閉じ右肩が上がり始めますが、下半身の荷重を左へ移動(並進)させ、上下に時間差を作ります。

これは胸骨の先行を容易にするための準備で、始動直後の小さな動きですが、アイアンに限らずスイングの基本部分を構成する重要な動きです。

後に説明する前腕の回旋と合わせ、腰から腰までのショートスイングで構いません。

リズミカルに動くと、細部の動きがよくわかりますので、何度も繰り返し上下の時間差を体感し、記憶してください。

次は始動直後から切り返しまでです。

前傾角度の維持は左右の側屈がアイアンショットの鍵となる

アドレス時に作った前傾角度を維持するポイントは、左右の側屈を理解することです。

鏡の前に立ち両手を左右に広げ、肘を直角に曲げアドレスの前傾を作り、肩甲骨の動きを意識し開閉しながら上下に入れ替えます。

頭の位置は変えずに、顎の下に左右の肩が入るよう連続して入れ替えた後、肩甲骨ではなく側屈を意識して入れ替えてみてください。

肩は簡単に顎の下に入るはずです。

スイング始動直後、左から右へ荷重が移動し始めたら左肩甲骨を下げ、右肩甲骨を引き上げ、左手を掌屈させながら右爪先方向へ押し込みます。

グリップエンドが右股関節付近を通過するタイミングで上体を左へ側屈、胸骨を右に回旋させながら右肩甲骨を閉じ、右肘をたたみます。

この右肘のたたみと連動した左手の掌屈と右手の背屈でコックの形が決まります。

肩は上下の入れ替えが基本で回転はしません。

肘をたたむと、クラブヘッドに慣性が作用し、一気に切り返し付近まで移動しますが、胸骨は、クラブヘッドの動きが止まる直前に並進した下半身に引かれ左へ回旋しはじめます。

この動きが重要で、慣性で切り返しまで一気に移動しているヘッドとは逆の方向へ胸骨を先行させる準備が始動直後の下半身左への並進です。

クラブヘッドの動きを手先で意図的に管理するのではなく、理想的なトップの形を作るためには体をどのように使えば良いのかに注目してください。

アイアンショットに限らず、ヘッドの動きを慣性にまかせるのはゴルフスイングの基本です。

次は、切り返し直後から側屈開始までの解説です。

アイアンショットの再現性を高めるために必要なダウンスイングの基本

切り返しで一番重要なポイントは右側屈へ移行するタイミングです。

腰の並進により荷重は左足母指球に向け移動中で、胸骨は先行し、左肩甲骨は開き、右肩甲骨は閉じたまま、そしてグリップエンドを右膝外側に向け、顎の先端は右膝に向けたまま、側屈開始です。

書くと長いですが、この一連の流れはほんの一瞬の動作です。

鏡の前に立ち、各部分の動きを目視し確認してください。

パートナーがいるのであれば、切り返しポイントでグリップエンドを押さえてもらいながら腰の並進を繰り返すと、質の高い練習になるでしょう。

その際の注意点は、胸は先行させながら腰を並進させることで、これが伴わなければこのドリルの意味はありません。

松山英樹プロをはじめとしたトッププロの切り返しで、頭が飛球線後方に大きく傾く原因は右への側屈にあり、遠心力の支点をヘッドから遠ざける動きです。

アイアンショットで綺麗な薄く長いターフが取れるスイングは、入射角が浅くなるのが特徴で、右への深い側屈はそれを作り出す基本でもあります。

切り返し直後からここまで、グリップは何もしません。

両肩甲骨と胸骨の動きと腰の並進のみで、グリップはなるべく高い位置を維持してください。

左手の掌屈を解かずに押し込み続けるイメージです。

次は、右肩甲骨と右肘の開放からインパクト、フィニッシュまでです。

ゴルフスイングの基本は尺骨回旋

本解説グリップ部分でも触れましたが、ゴルフスイングの基本は前腕小指側にある尺骨を軸とした腕の回旋にあります。

この回旋軸とシャフトの軸を揃えることで、再現性の高いインパクトを実現できるのです。

切り返し直後に機能させた右への側屈により必然的にグリップエンドは落ちてきますが、ボール方向ではなく、右膝外側を向くよう手首の掌屈を維持します。

グリップを後ろに置き去りにしたまま側屈を続け、左前腕を尺骨軸を中心に左へ回旋させながら、両腕を真下ではなく前方へ投げ出すように振り出します。

胸骨は先行していますが、両肩のラインは右後方を向いているはずなので、右前方です。

腕の回旋は限界付近まで、右手甲がボールに向かうイメージまで回してください。

こうなると左肘が外側に引ける感じがしますし、見た目にもそう映りますが気にする必要は全くありません。

タイミングは体の柔軟性で個人差がありますが、インパクト付近での左肩甲骨は閉じながら上に引き上げ、右肩甲骨と右肘は回旋しながら解放します。

胸骨は回転しますが、左右の肩は上下の入れ替えで、インパクト付近では回転しません。

つまり腰、胸は飛球線方向に向かっていても、肩のラインは閉じたままインパクトです。

この左右肩甲骨の動きと右への側屈が、アイアンをはじめとしたクラブ全体の強く再現性の高いインパクトの基本なのです。

再現性の高いアイアンショットを支えるのは基本を押さえたスイング

肩の回転不足、バックスイングが浅い、グリップエンドはボールに向けて、グリップを腰に引きつけて回るなど。

これらは決して間違ってはいないのかもしれませんが、ゴルフクラブの機能は進化しており、現代では通用しにくい助言です。

掌屈、背屈、尺骨軸、回旋、並進、側屈、耳慣れない言葉がたくさん出てきましたが、ぜひ検索しご自身のゴルフに取り入れてください。