ゴルフクラブをトップの位置まで引き上げたあと、ダウンスイングへの切り返しで頭を残すスイング法があります。
そうすることで飛距離が20ヤードはアップすると言われる魅力的な打法ですが、そのためには頭が沈む姿勢をとる必要があるようです。
今回はリスクのある魅惑のスイング法を紹介します。
切り返しで頭が沈むゴルフスイングの効果は都市伝説?
ゴルフの都市伝説のようなものに、「このドライバーは20ヤード飛距離が伸びる」というのがあります。
もしかすると本当に伸びるかもしれないと手に取ったら「負け」です。
ゴルフ規則で反発係数は決められています。
すでにどのメーカーも現在の規則を超えるほどの性能のものを作っていましたが、規則が改正されて「飛ばせないクラブ」を作っています。
その中で、20ヤード飛ぶとしたら違反クラブ以外の何物でもないとも考えられても仕方ありません。
同じような都市伝説に、「切り返しで頭を沈めたら20ヤード飛距離が伸びる」というのがあります。
テークバックからダウンスイングに移る切り返しのときに、頭が沈むと飛距離が伸びるというものです。
これは満更ウソではなく、確かにこの打撃方法ができれば20ヤードアップは可能かもしれません。
ただ日本でこのスイングをツアーで使い続けたのは、丸山茂樹プロくらいしか思い浮かばないくらい、難易度の高いスイング法なので練習するだけ無駄かもしれません。
トップからの切り返しで頭が沈むゴルフスイング
実はこのゴルフスイングは、男子プロの多くが1度は試してみるのですが、長く使い続けている選手はいません。
なぜかというと、腰に過度な負担がかかること、またボールの置かれたライによっては使えないスイング法だからです。
そして、何よりも国内ツアーのコースで、セカンドショットが20ヤード足りないというセッティングが、毎ホール出てくる機会がないということが大きいかもしれません。
一方で女子プロは20ヤードも伸びているのかは分かりませんが、このスイング法を取り入れている選手は結構います。
ただ飛距離アップに繋がっているのか、スイングを見たところでは正直なところ分かりません。
もしもアマチュアゴルファーがこのスイングを取り入れたとしても、男子プロのような飛距離アップは見込めずに、女子プロのようにスイングフォームとして定着させるだけになるかもしれません。
その上で、トップの切り返しで頭が沈む、ビハインドザボールについて確認していきます。
切り返しで頭が沈むとゴルフスイングが歪む?
まず切り返しで頭が沈む、ビハインドザボールについてです。
通常のゴルフスイングでは、アドレスのときと同じ姿勢をインパクトでもしようとしますが、ビハインドザボールは置かれたボールよりも後方に頭を残してインパクトをする方法です。
文字でみると難しいとは思えませんが、実際にスイングするとダウンスイングと一緒に左肩は開き出し、回転軸(重心)は左足のほうに移動していきます。
これでは頭を右に残すことはできませんし、仮に残すことができたとしても回転軸である背骨が右側に傾いているだけです。
背骨が右側に傾くと回転軸が斜めになって、スイング軌道がゆがみダフリやトップの原因となります。
ところがビハインドザボールにするときは、この悪癖となる腰のバランスを崩して、右腰を下げ左腰を上げることで、背骨の台座である骨盤を斜めにして軸を傾けるのです。
すべてのスイングでこのビハインドザボールを使うわけではなく、飛距離が欲しいときに使うため、常に2種類のスイングを準備していかなくてはいけません。
頭が沈む切り返しを実現するゴルフスイングの仕方
具体的に切り返しで頭が沈む、ビハインドザボールのゴルフスイングを確認します。
テークバックでは右腰を回転させて、重心を右股関節の内側に移動させます。
このとき右足はいわゆるベタ足にして、右股関節に体重をかけてトップの形を作ります。
そのトップでの切り返しでグリップを真下に下ろし、右腿の手前まで来たところでコックをリリースし、左手甲をターゲット側に向けます。
このトップからグリップを真下に落とすようないイメージを持つと、正しい軌道になるはずです。
そしてこの動作と同時に左腰を浮かせて右腰は沈め頭も沈むようにすれば、背骨は右側に傾きます。
インパクトまでのスイングはこの一連の流れができればほぼ完璧な状態ですが、腰の負担は相当なものだと言うのは想像できるでしょう。
特にインパクトからフォロースルーに入るころには「新体操の選手?」と思えるほどの無理な姿勢とバランスがないと倒れてしまいます。
ここで必要なのは技術ではなく、強靭な粘り腰と上半身がぶれない腹筋、そして身体を支える両腿の筋力です。
切り返しで頭が沈めばゴルフスイングは飛距離アップする?
切り返しで頭が沈むことで、ビハインドザボールのゴルフスイングは可能になります。
頭を下げずに残すだけなら、スイングの勢いで身体が開いてしまい、腰が左側に流れていくはずです。
基本の形は、右足の上に顔がある状態でインパクトを迎えます。
ですから身体は「く」の字なっていますが、一定の壁を作ってそれ以上は左側に流れないようにしなければなりません。
そのためにはマッスル運動で身体を鍛えて、ぶれないスイングができるような準備が必要です。
確かに右手で押し出す形になるため飛距離はアップしますが、一方で気をつけなければならないこともあるので注意が必要です。
頭を沈めることに集中すると、右肩が下がりすぎてダフリの原因となるからです。
また頭を後ろに残すことに集中すると、頭が右足よりも外側に出てしまい、スエーしたスイングになってしまいます。
このようなミスショットの注意と、無理な姿勢をとることで悪いクセがついてしまわないいよう、常に修正できる能力も兼ね備えておく必要があります。
頭が沈むゴルフスイングはリスクが高い
そして最後になりますが、なぜビハインドザポールは頭を沈めるのかということを確認しましょう。
テークバックで中心に合った重心を右側に移動させます。
切り返しによって本来は元の場所に戻るはずの重心を右側に残します。
このままインパクトを迎えると、右肩は右足よりもわずかに右側にあることになります。
右側に身体を残したために、グリップ位置がアドレスのときよりも遠くなっているでしょう。
そのためグリップを低くして、フェースがボールに届くようにしなければなりません。
これは頭だけが沈むのではなく、右肩を下げることでグリップ位置を調節しているわけです。
それだけに「丁度良い高さ」にしないとトップやダフリになるので、ここは技術が必要になります。
ただしクドイようですが、腰のレベルを変えたゴルフスイングのあとで、正常な腰のレベルを保てるスイングができる丸山茂樹プロのようなゴルファーでないと、ビハインドザボールのゴルフスイングはオススメできません。
切り返しのときの頭が沈むゴルフスイングの代償は大きい!
ゴルフスイングの切り返しで頭を残すビハインドザボールをするときは、意識的に頭が 沈むような姿勢をとらないと、正しいインパクトができません。
確かに飛距離はアップするかもしれませんが、軸が歪むスイングになるリスクがあり、その代償は大きなものになることを覚悟する必要があるでしょう。