縦と横の距離を合わせてピンポイントにボールを運ぶのがアイアンの役目ですが、ショートホールで同伴プレーヤーとの番手が違いすぎると、「負けた」と感じることがあります。
この負けた感は世界的な潮流で、いまでは飛ぶアイアンでしかもやさしいというのが売りになっているようです。
そこで飛ぶアイアンについて考えていきます。
アイアンは飛ぶことを求めるより扱いがやさしいものを選ぶのが基本
本来アイアンは飛距離を競う道具ではないので、どれだけ飛ぶかは評価の範疇(はんちゅう)ではなかったはずです。
7番アイアンの飛距離が常に150ヤードであれば使用に何の問題はありませんし、その前後のアイアンが10ヤード刻みであれば、コース攻略の上でも問題はありません。
ただ150ヤードのショートホールで、他のプレーヤーが8番アイアンや9番アイアンを使うとなると、飛距離で負けたと感じることがあります。
「いやいやアイアンは飛距離ではない!」と聞こえそうですが、現在市販されているアイアンの主流はストロングタイプです。
従来のアイアンよりも1番手から2番手、飛ぶように設計されているのです。
これは番手の刻印を単純に変えたわけではなく、構えたときは従来のアイアンと同じ感覚で、ショットしてはじめて飛ぶことができるのです。
構えると7番アイアンなのに飛距離は5番アイアンで、しかもやさしいと感じるのですから、主流になる意味も分かるような気がします。
ストロングアイアンは飛ぶだけでなくやさしいクラブに設計されている
構えたらやさしいと感じ打ったら飛ぶのがストロングタイプのアイアンですが、やはり問題はあるようです。
従来の7番アイアンの飛距離が150ヤードだとして、ストロングアイアンは170ヤード飛ぶと過程します。
すると6番アイアンが180ヤード、5番アイアンが190ヤードと10ヤード刻みであれば、8番アイアンは140ヤード、9番アイアンは130ヤードで、その下はピンチングウェッジになります。
通常ストロングタイプは5番アイアンから9番アイアンまでがセットで、ウェッジは別売になっています。
そうするとピッチングウェッジが100ヤードだとしたら、9番アイアンとの間隔は30ヤードもあることになります。
そこをほかのウェッジでカバーするといっても、ピッチングウェッジ以上に飛ぶタイプはほぼありません。
しかもグリーンを狙うことを考えると、アマチュアゴルファーは150ヤード以内のアプローチの機会が多いはずです。
下に厚いバリエーションが必要だからこそ、ピッチングウェッジとサンドウェッジの間にアプローチウェッジを設けるように、ウェッジのロフト角が豊富に揃えられているのが現状です。
アイアンが飛ぶのは技量以上にやさしいと感じるから?
飛ぶストロングアイアンを選択したときに、ショートアイアンのバリエーションに不安を感じることでしょう。
ストロングタイプの中には、5番アイアンから6番アイアンまではストロングタイプで、7番アイアンから9番アイアンまでで補正をして、ピッチングとの齟齬(そご)がないようにセッティングしているものもあります。
アイアンセットの中で飛ぶことを重視したアイアンと、アプローチを意識したアイアンに分けたのですが、そうなるとやはり各番手の間隔が気にあるところです。
10ヤード刻みであれば、クラブ選択をするのはやさしいと思いますが、番手ごとに間隔が違うと扱いが難しいかもしれません。
飛ぶことだけを考えると、2番手分飛ぶストロングアイアンは魅力的ですが、距離調節をしなければならないのは厄介です。
本来のアイアンの役割を考えると、せいぜい1番手分上回る刻み方のタイプが良いかもしれません。
飛ぶことがマイナスになることもありますが、一方でスピン量が増えて簡単に止める球を打てるようになっている点も注目しなければなりません。
やさしいアイアンなのに飛ぶのはロフト角に秘密がある
飛ぶように作られたストロングタイプのアイアンは、普通にスイングしてもピンをデットに狙えるやさしいアイアンでもあります。
もともとストロングアイアンが飛ぶ理由は、ロフト角のセッティングにあります。
簡単に説明すると、7番アイアンに5番アイアンのロフト角をつけたようなものです。
ただ構えたときに7番アイアンに見えるので、5番アイアンよりはやさしいと感じるはずです。
飛ぶとい観点からはロフトが立っていることですが、それでもやさしいと感じるのはワイドフェースで低重心に作られているからです。
打面が広いと安心感がありますし、低重心は高弾道でバックスピンの効いた球筋になります。
特に低重心はソール幅が広いと感じるので、ユーティリティやフェアウェイウッドのようなヘッドの抜けを実感できるはずです。
強いインパクトを狙うとザックリしそうな気がしますが、低重心のアイアンは安心してヘッドを走らせることができます。
普通にスイングするだけで、バックスピンを効かせてグリーンに止めることができるのであれば、魅力のあるアイアンだといえます。
飛ぶのが当たり前になると難しいタイプが好まれる結果に
飛ぶアイアンを選ぶ場合には、飛距離もさることながら、より低重心でソール幅の広さに注目をするとやさしいアイアンとして使うことができます。
例え番手間の距離に開きがあっても、ワイドフェースで低重心であれば、簡単に距離を打ち分けることができるようになります。
この扱いのやさしさがあるからこそ、世界的に人気が高くなったわけですが、「ただ飛べば良いわけではない」という意見も多く、飛ぶアイアンは確保しながらもわざわざ扱いの難しいタイプに人気が集まってきています。
せっかく簡単に扱えるアイアンができたのに、扱いを難しくして欲しいと願うのは、自分の意思でボールをコントロールしたいということの現れでもあるでしょう。
低重心で重心深度が深くなるように、バックフェースの中心下部を盛り上げて重くした曲がらないタイプが主流です。
しかしながら中・上級者になるとフェードやドローをかけたり、フェースを開いてロフト角以上の高弾道やスピン量を増減して打ち分けたりと、自分の技量に合った球筋で攻めたいという希望があり、現行では多くのセミハードタイプが揃えられてきています。
クリーンなショットでこそやさしいアイアンは活かせる
単純に飛ぶアイアンが欲しいと考えていたゴルファーに技術改良を加えてやさしいアイアンを提供したはずが、徐々に高機能アイアンへと変貌していきます。
ワイドフェースではないストロングタイプのアイアンや、球離れがよくボールコントロールができるアイアンなど、ニーズに合わせたものがたくさんできてきています。
そこに従来型のアイアンで「飛ばない」と悲観しても、もともとのロフト角や構造が違うのですから勝てるわけがありません。
ただし、これらのアイアンはスイートスポットでインパクトしてこそ、その性能を活かすことができますので、確実なミートは必須の条件となります。
またスイングについては、アイアンでよく見るダウンブローは向いていません。
打ち込むタイプのダウンブローではなく、払い打ちをするレベルブローのスイングをすることで、最大限に性能を引き出すことができるのです。
そのため飛ぶアイアンを選択するときは、ターフを取らないクリーンなショットを磨いておく必要があります。
やさしい感じで飛ぶアイアンこそ自分に合っているかを確認
アイアンが飛ばないと悲観するのであれば、単純に現在主流の飛ぶアイアンに替えたほうが良いかもしれません。
ストロングタイプは飛ぶだけではなく、バックスピンが効いた止めるショットもできる、扱いにやさしいクラブに仕上がっています。
今では技量別に選択することができるので、自分に合ったものを探すようにしましょう。