ドライバーショットを含め、ゴルフスイングを形で覚えることはある程度大事なことだと思いますが、そのフォームに伴い重心の位置の変化もセットでないと意味のないものになってしまいます。
ゴルフは足、下半身でボールを飛ばすと言われますが、今回はその見ることのできない重心について考察します。
ドライバーショットの重心移動と荷重移動の意味の違い
重心とは物体の質量の中心で、重力が釣り合う一点です。
成人男性の場合、地面から身長の56%にあると言われています。
大体へそかその少し下の辺りに当たると思います。
これがゴルフのアドレス、ドライバーの場合は、腰を少し落とすこととクラブを持っていることでそれよりも少し上の位置で前方向(おそらく体の外に出るくらい)になるでしょう。
重心移動とは、この点が移動することです。
一方荷重とは、外から力を加えられる力のことです。
ゴルフで言えば地面から反力を受けている箇所のことで、重心のように一点ではなく、左右の足やつま先側かかと側にも按分されます。
その按分割合が変化することを荷重移動と言います。
荷重は感じることができ、意識的に掛けたり掛けなかったりもできます。
しかし重心は感じることはできず、直接は意識的にその移動をコントロールできません。
つまり荷重移動をすることで、重心移動が結果的に起こるのです。
但しこれは他のレッスン書なり文章では定義があいまいだったり混同していたりしているため、ここ限りの定義とします。
ドライバーは足への2種類の荷重で重心を操る
前項で重心と荷重とを其々定義しましたが、この項ではその荷重には2種類あるという説明をしていきます。
これはイメージしやすくする造語ですが「受荷重」と「送荷重」です。
受荷重は重心がゆっくり寄ってくるように膝を少し曲げながら荷重します。
送荷重は逆に膝を伸ばしながら荷重することで、重心を反作用で荷重する側と反対側に移動させます。
例えば、歩いたり走ったりするときは足が着くときから体の中心の前にあるときまで受荷重で、中心を過ぎてから離れるまでは送荷重です。
ドライバーショットで「右足の蹴り」と言われるのは右足を伸ばして送荷重し、重心を左足に移動させると考えられますが、ここでは「右足の蹴り」はしないスイングを推奨します。
その理由は後述します。
俗に言われる「明治の大砲」スイングは、左足側に重心移動しようとして左足に力を入れますが、これが送荷重してしまっているので、左ひざが伸びて重心が反発し、結果右足側に重心を移動してしまい、更にバランスを取るために右足が膝を曲げながら受荷重します。
すると、右膝が曲がって左ひざが伸びた状態で後傾になるので、本来右肩が左肩よりターゲット方向に向き高さも左肩より高くなるはずのフィニッシュが、真逆の形になってしまう「明治の大砲」スイングになってしまいます。
右足の荷重と重心移動でテークバックとバックスイングの役割を分ける
ゴルフのスイングは一般にシャフトプレーンとスイングプレーンで解説されます。
シャフトプレーンは、アドレスしたときのシャフトの延長線上に伸びる面でボールからベルトかへそ辺りを通ります。
そしてスイングプレーンはアドレスしたときのボールから肩か首筋辺りを通る直線上の面です。
テークバックは、シャフトプレーン上をヘッドがなぞっていき、おおよそクラブがターゲットの逆方向を向くまでのことです。
グリップは腰か胸の辺りまで来ます。
ウェッジかショートアイアンのハーフショットかコントロールショットなら、このままシャフトプレーン上に回して行っても良いですが、ドライバーでは満足な距離は出ないでしょう。
バックスイングはそこからシャフトプレーン上にあるヘッドをスイングプレーン上にまで押し上げる役割で、グリップの位置は耳の高さくらいになります。
つまりバックスイングで手を上げる高さは胸から耳くらいの幅だということになります。
その分をどう上げるかと言うと、右足を踏んで受荷重をすることで、体がバランスを取ろうとしてヘッドを上げていきます。
つまり、バックスイングでクラブを上げるのは右足への荷重と重心移動による体の反応ですから、意識するのは足のほうです。
感覚的にはグリップの位置が右脇の横から真上に上がっていきます。
ドライバーを飛ばすための重心移動でトップを作る足の使い方
前項のようにバックスイングで右足を受荷重すれば、重心は右足側に寄っていきます。
重心は右足方向に移動しますが、腰がスエーしてしまうと捻転差ができません。
バックスイングでは、上半身は回転して、下半身は回転させないことで捻転差を作ります。
これも下半身が土台で絶対に動かさないという意識をするのではなく、上半身につられて右へ回ろうとする分左に回して相殺させる感覚が求められます。
ここであまりに頭を動かさないことを意識し過ぎて右足を送荷重してしまうと、重心移動ができずダウンスイング時に頭が突っ込んでしまいます。
頭の動きは、無理に止めたり逆に揺さぶったりせずに「気にしない」ようにしましょう。
右足の荷重は上から下へ行うようして、しっかり右膝が流れるのをブロックします。
ドライバーではこのように捻転差を作り、バランスを崩さずにこれ以上捻転できない時点がトップであって見た目の形ではありません。
切り返しから重心移動してボディーターンでドライバーを振る
トップの時点は右足荷重で右足寄りに重心がありますが、これを左へ重心移動していくキッカケは「抜重」です。
荷重は右足寄りにはありますが、トップのときでも左右の足の間のどこかにあります。
ということは、右足を抜重すれば体が左足方向に倒れていくはずです。
これを倒れないように左足で受荷重すると、結果として荷重移動になるのです。
したがって、ドライバーであっても重心移動するための「右足の蹴り」は必要ありません。
重心移動につれて右足は地面の反力を失っていきますが、むしろ粘ったほうが力を出せるポジションになります。
左足は受荷重した後、背面方向に送荷重していきます。
膝を伸ばしながら(ムーンウォークのような)すり足で歩くように後ろに引いていくことで、重心は荷重する逆方向のターゲット方向に移動します。
そのためトップからの荷重中心点の軌道は右足から左足に移動した後、フック型のように少し後ろに戻ります。
例えば、紐に重りを付けてグルグル回すと、手元は円を描くより直線的な動きをするはずです。
このとき、一番重りを加速させるのは、奥から手前に引く瞬間です。
このように左足の「引き」で体を回していきます。
具体的には左足のつま先で着地した後かかと方向に荷重移動していきます。
この左足の引きが強すぎると頭が前に突っ込んでしまいますが、先程の右足の粘りでそれを抑えます。
重心移動と回転力を活かす腕の使い方
スイングを真上から見るとしてテークバックをすると、右腰がグリップと両肘でできる三角形の中に入りますが、ここからのバックスイングでは真上に上がって、ダウンスイングもトップから真下に降りて来ます。
したがって、テークバックからトップ、ダウンスイングでインパクトゾーンに至るまで、右腰が三角形の中にあり続けます。
ドライバーの様な長いクラブは特にトップから右肘を背面方向に降ろします。
バックスイングでシャフトプレーンからスイングプレーンに乗せると前述しましたが、ダウンスイングでは、なるべく早めにまたシャフトプレーンに近いところまでに降ろすことになります。
これにより、ボディーターンに腕が同調するスイングになり、重心移動に対し振り遅れのないスイングができるようになるのです。
違う表現をすると、バックスインでは右膝と左肩を近付けて、ダウンスイングでは右肘と左足の膝裏を背面越しに近付けるようにするのがコツです。
目に見えない荷重、重心、タイミングは足で感じる
今回、スイングにおける重心について、その荷重との違いや種類等を造語も含めた形で説明しました。
いずれにしても、それを感じたりコントロールしたりするのは、地面との接点である足でしかありません。
これが「スイングは下半身主導でする」と言われる所以です。
何がどうこうというより、先ずは地面の反力を「感じる」ことが大事なのではないでしょうか。
更に、その「感じよう」という意識だけでも、スイングを安定させる要因になると考えられます。