パターにはライ角を規制するルールがあります。
普通のパッティングスタイルをとると、このルール内のライ角が丁度良いことが分かるはずです。
一方でパターの構え方や打ち方は自由ですから、特殊な構えのときに不自由な場合もあります。
今回は、どうしてパターのライ角が規制されたのかまとめます。
ルールでパターのライ角に規制を設けたのは難しくするため
なにかとルールにこだわるゴルフですが、元々はマッチプレーから始まったため、当事者同士で取り決めて、それをルールとしていたようです。
基本的にゴルフのルールは慣習法だったことから、起こった事象に対してルールを定めて作りあげてきたものです。
ところが多くの人たちが1度のプレーで勝敗を分けることができる、ストロークプレーができてからは明文化したルールが主体になっていきます。
大改正が4年に1度、小改正が2年に1度行われ、それ以外の年は補足や修正がメインとなり、不完全だったルールを100年以上も変更してきました。
ルールは絶対なのですが、制定されてから延々と改定しているところをみると、1世紀以上は不完全なルールのままプレーをしてきたとも言えます。
ルールの内容を見るとゴルフ規則とアマチュア資格、それに用具の規則に分かれています。
ゴルフ規則やアマチュア資格は時代とともに変化を遂げていますが、用具については「飛ばないようにする」、「入らないようにする」とプレーヤーにとってマイナスになるような変更が常になされるようになってきています。
そのマイナスの規制で代表的なのがパターで、シャフトを挿す位置やライ角、また形状そのものに厳しい規制を設けて入りづらくしてきました。
パターにのみ許される特別なルールにライ角がある!
パターのヘッドをソールして、そのヘッドから立ち上がるシャフトの傾きと地面との内角度をライ角と言います。
現在パターのライ角は80度以内とルールで定められています。
90度であれば地面と垂直ですから、80度はほぼ真っ直ぐに立っていることになります。
この真っ直ぐに近いシャフトは、正確なストロークにとって有利に働くことが予想されます。
またパターの長さは、長尺パターでご存知のように、どんなに長くても規制されていません。
ただし最短は18インチ以上と決められていますから、45センチ以上のパターでなければなりませんが、膝の高さほどのパターを使うことは現実的ではないので、規制がないと考えても良いでしょう。
さらにパターのみ円形ではない変形グリップが使えることになっています。
グリップの最頂部が平らで、ストロークに有利になる構造が認められています。
一方で外形的にはパターとそっくりなチッパーだとアイアンに分類されているので、パターのグリップを使用することはできません。
このようにパターは他のゴルフクラブと比べると、特別なルールが盛り込まれていて、多くの場合にはプラスに働くことになります。
ルールでのライ角は80度が上限なのに市販のパターは70度?
仮にライ角が90度でシャフトは地面から垂直に伸びているとして、パターグリップを両手で挟んで左手の甲とフェース面が一致させれば、今よりもはるかにパッティングは簡単になります。
両肩から腕を下ろして、その腕と一対になるようにパターを構えれば、真っ直ぐに転がらざるを得ないくらい正確なパッティングができるはずです。
ところがルールでは、パターのライ角は80度以内と決まっています。
この10度の差によってグリップよりも前方にヘッドを置かざるを得ず、その軌道でストロークをしなければならないわけです。
ただし実際にはグリップを握るとき、左右の手は前後するためライ角は70度程度が構えやすいようです。
もっともパターは個々で好きなフォームをとっても、狙ったところに打てるのであればどんな構え方でも問題はありません。
そう考えるとライ角にとらわれることなく、「自分に合ったパター」を探すことが大切です。
ここまでがパターのライ角に関する基本の考え方ですが、2つだけ基準となるものがあるため、それを妨げない程度の「自由」ということにはなります。
パターを構えるためにルール内のライ角が重要な理由
パターを構える上での基本の1つ目は、パッティングライン上に目を置くことです。
市販されているパターの長さで、もっとも多いのは34インチ、そしてライ角は70度です。
34インチでライ角70度のパターの場合、グリップから約12センチ前にヘッドがセットされます。
両肩から真っ直ぐに腕を下ろしたとしたら、グリップの握る位置と両肩はほぼ同じラインにあります。
そのグリップの位置から約12センチ前に、パターのヘッドがある計算ですが、ここが両目のラインと同じ位置なのです。
左目の下にボールを置くと、ストロークしたボールは一旦浮いてから着地して転がり出します。
もしも両目の中心にボールを置いていたら、芝の上を擦りながら押し出すようにターゲットに向かうため、芝の抵抗でショートする可能性が高くなるでしょう。
パッティングラインと両目を一致させられるのは、ライ角を80度以内と定めたルールのお陰で、前傾した上半身の中であごから目までの距離がこの範囲内にあるものを選ぶと「入りやすいパター」となるでしょう。
スクエアに構えるにはルールに則したパターのライ角が大事
パターを構える上での基本の2つ目は、フェース面をパッティングラインに対してスクエアにすることです。
ヘッドが前方にあると、パターといえども軌道はイントゥインになります。
ヘッドを真後ろに引けるのには限界があるため、大きなストロークではゴルフスイングと同じように軸を中心とした円を描く軌道になります。
もっともパターの場合には、テークバックで捻転するような極端なストロークをすることはありません。
ただフェースの角度がわずか1度違っても、ワンピンの距離なら2インチ程度も横にずれてしまう計算です。
極力イントゥインの軌道を抑えて、ヘッドをストレートな軌道でストロークできるようにすること大切です。
そのためアドレス時にフェース面がターゲットに向いていること、そしてインパクトでも再現がされていることが重要です。
再現するためには上半身の前傾姿勢と、ライ角に合わせたグリップの位置、そして正しいアドレスの姿勢をとることが、正しいパッティングのためのマイルールとなるはずです。
ライ角がルール化したのはパターの名手が原因
パターを除くと一番長いのがドライバーです。
ドライバーの上限は48インチまでと決まっていますが、パターには長さの上限はありません。
実はこの上限がない長さと、ルールで定められたライ角80度以内は深い関係にあります。
ずっと以前にパッティングの名手と言われたプロゴルファーがいました。
パッティングを突き詰めた結果、パッティングラインを跨いで、股間でパターを動かす方法をとりました。
それで面白いくらいにポンポンと入ったそうですが、そのスタイルに不評が続出してしまいます。
すると股間パッティング(クラウチングスタイル)ができないように、パッティングラインを跨いではいけないというルールを作ります。
そこで今度はボールを右足の横において前方に打ち出す(サイドサドル)打ち方を考え出しますが、またしてもライ角80度以内というルールが制定されることになります。
たった1人のプロゴルファーのための規制だったと思われますが、これが球史に名を残す165勝を上げたサム・スニードへの規制であったことから、このライ角80度のルール制定が正しいのかには疑問の残るところです。
ルール制定は万人のためにあるもので、個々のプレーを抑制するために規制するのは間違っているのではないでしょうか。
パターのライ角を縛るルールは解消したほうが良い?
パターのライ角がルールで80度以内としているのは、入りやすさを抑制するためという考え方があります。
一方で、当時最強と言われたプロゴルファーだけに対する規制ではないかという考え方もあります。
プレーの迅速化を求めるゴルフ界ですから、簡単にパッティングができるよう規制を外したほうが良いという意見が出てきてもおかしくないとも考えられます。