アイアンは圧倒的にスチールシャフトが多いのですが、高性能を求められるドライバーはカーボンシャフトが大勢を占めています。
アイアンに関して、カーボンは相性が良くないのでしょうか。
今回は、性能的に優れているカーボンシャフトがアイアンで普及しない理由と、その背景を考えます。
アイアンのシャフトがカーボンにならない理由はなぜ?
すでにドライバーのシャフトはカーボンシャフト一択になっていて、スチールシャフトは稀となっています。
一方アイアンのシャフトはスチールシャフトがまだまだ全盛で、カーボンシャフトは少ないようです。
ドライバーのシャフトとして様々な改良を重ねてきて、信頼の厚いカーボンシャフトになったにもかかわらず、なぜかアイアンのシャフトとしてはシュアを広げることはできていないようです。
すでにカーボンシャフトの良さは、ドライバーのシャフトで周知されています。
その良さの筆頭となるのが「軽さ」となりますが、これはスチールシャフトのほうがカーボンシャフトに近づくことになり、軽量スチールシャフトが製造されることとなります。
一方「重さ」に対する信頼感は根強いものがあり、重いからスイングが安定する、重いから思い切って打ち込めるといった考えが蔓延っています。
そのため敢えて重たいカーボンシャフトを作り、握った感触ではカーボンかスチールか判断できないほどスチールシャフトに似せたものも登場しました。
カーボンシャフトの良さである軽さはアイアンにとってマイナスなの?
カーボンシャフトの良さは、「軽さ」にあります。
軽いシャフトによって、スイングスピードは速くなり、それまで以上に強いインパクトを与えることができるようになるからです。
インパクトの強さは、結果的に飛距離の伸びに繋がり、ゴルフ界では飛びに対する規制まで作られるようになっています。
幸いルール上の規制はヘッドに対するものであり、反発力を制限することで一旦は終結しています。
ただ今後はシャフトの長さを規制することで、飛ばないゴルフクラブにしようという動きも出てきているようです。
シャフトの影響力が大きくなるなか、アイアンのシャフトがスチールのままであることは、ある意味では不思議なわけです。
シャフトの軽さが正確なインパクトを阻害するというのであれば、ドライバーのシャフトとして広まることはなかったはずです。
結果的にアイアンのシャフトはスチールのままなのですが、性能の高いカーボンを使わない理由は安定を導く「重さ」への思い込みだけではないかもしれません。
アイアンは硬いシャフトを好むことからカーボンは敬遠される?
アイアンの場合は硬めのシャフトが好まれるようですが、それは地面に向かって打ち込むことに起因しているようです。
アイアンショットの基本はレベルブローですが、素振りをしたとき練習マットの上をソールが擦る「シュッ」という音がするようなスイングをします。
俗に言う「払い打ち」をすることで、ターゲットに定めた箇所にボールを運びます。
こうしたレベルブローは芝の抵抗もないことから、アドレスで構えたときのフェースの角度をそのまま再現することができ、方向性や距離感は正確なものとなります。
すなわちシャフトに過度な負荷はかからないため、スチールかカーボンかの選択はヘッドスピードの速さの違いとなるはずです。
こうしたレベルブローのスイングで硬いシャフトが必要なのは、シャフトが過度なしなりによって、インパクト時にその反動でしなり戻りが強くなってフェースが閉じてフックしたくないからです。
つまり理論的にはフック防止のための硬いシャフトなわけですが、カーボンシャフトにも硬いシャフトは多数あることから、スチールシャフトにしなければいけない理由とはならないと考えられます。
7番アイアンでカーボンシャフトの良さを確認しよう
そもそもヘッドスピードが速くなれば、それだけインパクトが強くなり、飛距離は伸びていきます。
平均的な7番アイアンの飛距離は140ヤードとされていますが、番手間の距離が10ヤード刻みと考えれば、9番アイアンは120ヤードです。
そして9番アイアンの2倍がドライバーの飛距離と言われていますので、120ヤード飛んでいるとしたら、ドライバーは240ヤードの飛距離出せるわけです。
これを標準と考えるとき、そのヘッドスピードは43m/sと言われています。
ところが7番アイアンの飛距離が180ヤードもある場合があります。
男子プロゴルファーの多くは7番アイアンの飛距離が180ヤードを目安にとしているようです。
強いインパクトが飛距離に繋がっているわけですが、ヘッドスピードは48m/sを少し上回る程度です。
これだけのヘッドスピードの違いで飛距離が4番手も違うわけですから、距離を刻むアイアンと言えども、カーボンシャフトでヘッドスピードを高めて飛距離を目論むのは当然のことかもしれません。
アイアンのシャフトはスチールよりカーボンが良いと言えるのか
カーボンシャフトに対するマイナスのイメージは、「硬さ」「軽さ」の2つに要約されますが、実際にはそのどちらもがドライバーのシャフトによってメリットが証明されています。
「硬さ」については前術の通り「Xシャフト」もあるため、スチールでなければならない理由とはなりません。
さらにカーボンシャフトは単に硬いだけではなく、シャフトのどの位置でしなりを出すかを意識的に作ることができるので、ゴルファーの好みに合わせて千差万別の性能を作り上げることができます。
「軽さ」については、ニーズの高まりに応えて軽い素材をあえて重く作り、今ではスチールシャフトよりも重たいカーボンシャフトまで作られています。
もちろん、この重さにメリットを感じるゴルファーは極わずかですが、スチールシャフトよりも重たいシャフトを作れることに意味があるのかもしれません。
この硬さと軽さ2つの懸念が解決しているのであれば、カーボンがアイアンのシャフトとして使われても不思議なことはないはずです。
それでも現実のニーズは、スチールシャフトが強くなっているのです。
日本発のカーボンシャフトをアイアンに装着しよう!
カーボンシャフトはほとんどが日本生まれの秀逸な製品です。
近代ゴルフの発祥は英国にあり、今のゴルフ界は米国がリードしていますが、ゴルフ用品の一端に日本発祥のカーボンッシャフトがスタンダードな製品として使われています。
炭素繊維自体はシャフトのために開発されたものではありませんが、流用し改良を重ねた結果、優れたシャフトとなってゴルフ界で認知されたわけです。
しかも年々改良され進化を遂げている、成長を続けているシャフトですから、昔のイメージで「カーボンは軽くて不安定」「カーボンは軟らかくて頼りない」といったイメージは、払拭されていくべきです。
ドライバーでカーボンシャフトの性能は実証されましたので、あとはアイアンでスタンダードに採用されるようになれば、日本発のカーボンシャフトがゴルフ界を席巻する日は来るかもしれません。
席巻するためには、国内で販売されるアイアンの装着率を上げることと、シャフト単価の引き下げが急務です。
そのためには、スチールシャフトを超えたカーボンシャフトを再確認するためにも、国内プロの使用率が上がることを期待したいところです。
カーボンシャフトのアイアンを普及させよう!
アイアンはスチールシャフトが大半を占めていますが、ドライバーの装着率を見て分かるようにカーボンシャフトのほうが優れています。
思い込みで、硬さや重さに躊躇することはあるかもしれませんが、すでにその懸念は解決しています。
日本発のカーボンシャフトを見直すことで、ゴルフ界に新しい時代を作ることができるかもしれません。