アイアンをアドレスするとき、ボールの後ろにヘッドをソールしていますか?
ラフの中でソールが原因で芝が折れるようだと、その行為がルール違反に問われるかもしれません。
2019年のルール改正によって裁定集がなくなったことで、いわゆる判例も消えています。
今回はソールによるライの改善の解釈について考えます。
アドレスでボールの後ろにソールしても大丈夫?
アドレスに入るときにアイアンのヘッドをソールしませんか。
このソールは置いているのか、もしくは押し付けているのかで、しばしば問題となることがあります。
ゴルフでは、ボールやヘッドを芝面に置くことをプレース(place)と言います。
ドロップしてもボールが転がって止まらない斜面では、このプレースによってボールの位置を決めるときに使われます。
一方でアイアンのヘッドで芝面がへこむほど押し付けるプレス(press)は、ライを意識的に改善しているように見えることがあります。
例えば芝草の長いラフでは、ボールが深く沈んでいる場合があり、ボールの後方の芝草が邪魔になることがあるでしょう。
もちろんその芝を抜き取ったり踏み均したりすると、スイング区域の「ライの改善」でルール違反です。
しかしながらボールの後ろにヘッドを置く(プレース)ことは、2018年以前のルール裁定集によって認めることが公表されています。
ここで問題なのは、2019年のルール改正によって、この裁定集が有効であるかが分かっていないことなのです。
アドレスでアイアンヘッドをソールするとルール違反になる可能性は?
アドレスでアイアンのヘッドをソールして芝草を押し付けた場合は、スイング区域の「ライの改善」でルール違反になるかもしれません。
ただしソールすること自体が違反になることはありません。
元々2018年以前の裁定集では、ボールの後ろに軽くつけることを認めてはいますが、意識的にプレスして芝が起き上がらないようにしても良いとまでは記載されていません。
善意のプレーヤーのソールという行為によって、芝が寝てしまった場合には違反を問わないというものですから、マーカー(同伴競技者)がライの改善の疑いをかけた場合には2罰打のペナルティーを受ける可能性がありました。
しかも今までは裁定集によって、ライの改善についての適用範囲を定めていましたが、2019年のルール改正で根底となる裁定集はJGA(日本ゴルフ協会)のホームページ上から削除され、ゴルフ規則のオフシャルガイドというものに改定されています。
一方ルールでは、「ライの改善」と「スイング区域の改善」については明確に記されていて、そこには「あるがまま」でプレーをすることを支持し、自分にとって有利なライの改善を禁止すると謳っています。
アイアンをソールしてプレスするのはグレーゾーン
結局のところラフの中にあるボールにアドレスをする場合、アイアンのヘッドをソールするプレースがライの改善になるのかは明確にはされていません。
しかもプレスと判断されるかもしれない行為は、いままでもグレーゾーンだったのですから、新たな裁定が出るまでは、プレスするソールの仕方には注意が必要です。
ちなみに2019年から裁定集に代わり、「ゴルフ規則のオフシャルガイド」が発行されていて、そこの「規則8 コースはあるがままにプレー」を見ると、意図するスイングの区域の改善は認められないとしています。
さらにその改善方法について「曲げる、壊す」と明示していて、これを自然物の枝と考えるか芝も含めるのかは、今のところ分かっていません。
はっきりとした判断が下されるまでは、ルールに抵触するかもしれない行為は自重するのが最善の方法ではないでしょうか。
なお現在はホームページ上から削除されている2018年までの裁定集が有効である場合には、拡大解釈によって芝草が折れたとしてもライの改善にはならないと考えられます。
ライをソールする行為で改善するのはグレー
深いラフの中でのアドレスで、アイアンのヘッドをソールする行為は、グレーゾーンであることを認識しておく必要があります。
少なくともプレスするソールは、ライの改善または意図するスイングの改善に繋がると解釈できますが、2019年のルールの中に1つだけ気になる一文があります。
ゴルフ規則8.1bの「認められる行動」の中に、ストロークを準備しているとき、ストロークを行うときに、結果としてストロークに影響を及ぼすような改善をしたとしても罰はないと明示しています。
特に同項目の(4)では、ボールの直前または直後に、クラブを軽く地面に置くことを認めると加えています。
つまり意図的でなければ、ライを改善してもペナルティーは科さないということです。
これだけを見ると、「大丈夫なんだ」と思うかもしれませんが、その後段には「しかし次のことは認められない」として、「クラブを地面に押し付ける」ことを違反としています。
この「軽く置く」と「押し付ける」の違いは前述の通り、プレースとプレスの違いなのですが、意図しないプレスはルール上セーフなのかは書かれていません。
合理的なアドレスと説明できるアイアンをソールする方法
アドレスでアイアンヘッドをソールすることがライの改善に当たるのかは、ボールの置かれた状況で判断するのではなく、クラブを軽く地面に置いたのかを合理的に説明できることが必要です。
アイアンの自重によってライが改善したとしても、それはライの改善にはならないと考えられます。
もしもアドレスに入る前に、ボールの後ろをトントンとヘッドで叩くような行為をしたり、グリップを握ったときにヘッドを強く押し付けたりすれば、ライの改善と受け取られても仕方がないと考えられます。
そのためラブの中にあるボールの後ろにアイアンヘッドを置いて、そこからアドレスの姿勢をとるまでグリップは触れる程度の強さで支えます。
そしてスタンスをとってアドレスに入り、わずかにヘッドを浮かせてからテークバックを始めると、ヘッドを押し付ける動作は含まれていないはずです。
仮にライの改善を指摘されても、この動作について順を追って説明すれば合理的として判断されるはずです。
そもそもアイアンはアドレスでソールしないほうが良い?
ラフの中でアイアンをソールするアドレスは、十分に気をつける必要があるのはここまでの説明で十分理解できたでしょう。
ソールにこだわる要因としては、スイングの最下点でインパクトをするという、レベルブローのスイング軌道にあります。
また芝草によってボールがどれだけ浮いているのかの確認も、ヘッドを地面にソールすることで分かり、その浮いている分だけグリップを短く握れば正しいインパクトができることになります。
ただこの動作によって、2つのリスクが生じることになります。
1つは、ヘッドを地面まで下ろすことによるライの改善です。
芝草の茎が強い時季であれば、ある程度の力で押し付ける必要があるはずです。
第三者からはその行為がライの改善と映るかもしれません。
もう1つはボールが動くことです。
ラフの中のボールは地面の上にある場合と、密集している芝草にからまって浮いているだけの場合があります。
仮に浮いている状態でボールの後ろにソールすると、そのボールを動かすことになりペナルティーの対象となります。
そういった可能性を考慮して、ソールしない打ち方を練習しておくほうが良いと考えられます。
ケースバイケースでアドレスでの構え方を選択できて、リスクを回避することができるようになります。
アイアンをソールしないアドレスの仕方を身につける
2019年のルール改正では、ゴルフ本来のスタンスである「あるがまま」を再確認しています。
アドレスでアイアンヘッドを押し付けるように見えるソールの仕方は、ルール違反に問われないとも限りません。
そのため、日ごろからヘッドを浮かせたアドレスの仕方を身につけておくと、無用なトラブルは回避することができるはずです。