新しいゴルフルールでは、2度打ちはノーペナルティになります。
それまでは1罰打だったものが無罰になるのはプレーヤーにとって喜ばしいことのようですが、本当にこのルールが良かったのでしょうか?
新たに制定された2度打ちが無罰のルールについて考えていきます。
新しいゴルフルールで2度打ちはノーペナになった
2019年からの新ルールによって2度打ちのルールが変更されます。
以前は2度打ちがペナルティとみなされていたので1罰打が加算されていました。
その代わり1ストロークで3度打っても1罰打だったのですが、2019年1月からは新たなルールのもとノーペナルティとなります。
2度打ちしてもペナルティがなくなった背景には、「不可抗力」ということがあります。
ルールを知らずに犯した場合やうっかりミスで犯した場合は、プレーヤーに非はありますが不可抗力は防ぎようがありません。
1回のストロークで、偶然ヘッドに2回以上ボールが当たることを2度打ちと定めていますが、もちろん意識的に当てればペナルティは科せられます。
上りのショートパットでヒットが弱く、カップの手前で止まりそうなところに後ろから当てると、これはペナルティになる公算が大きくなるということです。
もっともゴルフは審判のいないスポーツで、各プレーヤーが公正に振舞うことが前提の性善説で成り立っているので、2度打ちがノーペナになっても誰も被害を受けることはないはずです。
新しいゴルフルールで2度打ちがノーペナの理由は不可抗力
新しいゴルフルールでは2度打ちが不可抗力だからとノーペナになったわけですが、実際に防ぎようはないのでしょうか?
本来インパクトで反発したボールは、瞬間的にその場から飛び出すので、2度打ちになることはありません。
インパクトの初速とヘッドスピードなら、飛び出すボールのほうが速いということです。
つまり普通にインパクトをしていると、飛び出したボールにヘッドが追いつくことはないはずです。
したがって普通ではない状態だから2度打ちになるといえます。
想定されるのは、フェースを開いてボールの最下部を擦るようにインパクトした結果、バックスピンのかかったボールは少し前方に上がっただけなので、ヘッドが追いついてしまって当たったというのが考えられます。
もちろんプレーヤーは違った形でボールを上げたかったのでしょうが、ミスショットで思った場所までボールが飛ばなかったことが原因です。
しかし、コレは林の中に入ったボールやバンカーに落ちたボールも同じことが言えるはずです。
予側はできなかったかもしれませんが、『ミスショットは予見できた』はずです。
ゴルフルールの2度打ちは予見できるし防ぐことはできる
新しいゴルフルールでは不可抗力による2度打ちがノーペナルティになりましたが、不可抗力とは人間の力では防ぎようがないもののことです。
それに対してロブショットを打てば、ダルマ落しのようなミスショットは予見できるはずです。
ダルマ落しを予見できれば2度打ちの防ぐ手立てはあります。
2度打ちになるのはヘッドがボールに追いつくためで、フォロースルーと飛球線が同一方向に出ることが問題です。
ゴルフスイングの基本は、軸を中心とした円の軌道なので、フォロースルーはインサイドに入るものです。
どんなに小さなショットであっても、インサイドインのスイングをすれば、2度打ちは防げると考えられます。
つまり2度打ちはスイングアークのミスであり、また予見することができるミスショットなのです。
結果だけを見れば不可抗力と考えることもできますが、それはドライバーショットがスライスするのと同じくらい当たり前のことなのです。
2度打ちが起こる場面も予見できるのにゴルフルールは無罰
2度打ちが起こる『場面』も予見できます。
ゴルフボールが上方向に飛び出して、しかもバックスピンがかかるようなショットの場面です。
具体的には、ラフからのショットでボールの下をヘッドがくぐる可能性のあるときや、バンカーでエクスプロージョンショットをするときも浮いたボールに当たる可能性はあります。
意識的にミスを犯すのであれば、それを防ぐ手立てを講じるのがゴルフと言うスポーツであり、それを不可抗力とするのであれば、ミスショットはすべて不可抗力になってしまいます。
起こりうるけれど防ぎようがない2度打ちは、ヘッドを直線でスライドさせるパッティングと、グリーン周りからウェッジでパターと同じように打つパットチップくらいのものです。
この場合ターゲットとボールを結んだ線上でヘッドが動くために、ボールに追いつくつもりはなくても当たってしまうことはあるかもしれません。
ただそれ以外はインサイドにフォロースルーすれば何の問題もないのですから、ルール上は従前通りに2回打っているので2打相当の1打+1罰打が正しいとも考えられます
新しいゴルフルールで2度打ちが無罰なら他にも見直しが必要
新しいゴルフルールで2度打ちは不可抗力によるものなのでノーペナルティが相当と裁定したようですが、実際には予見できますし防ぐ手立てもあります。
本来であれば1ストロークに1罰打で、次のショットは3打目になるべきです。
ルールの小改正は2年に1度行われ、4年に1度は大改正が行われるのがこれまでの形です。
そう考えると2023年には2度打ちの見直しがあるかもしれません。
プレーの結果が不可抗力になると考えられるのは、イップスのような症状のときです。
どう頑張っても防ぎようのないイップスですが、アプローチイップスの場合はヘッドを引くことができない、ダウンスイングが一旦止まって急激に動くといった、さまざまな症状があるようです。
そうしたアプローチイップスで悩んでいるゴルファーの多くは、2度打ちが常態化しているので、救済的なルール改正に歓迎しているかもしれません。
しかし、この救済が適用されるのであれば、アンカーストロークの規制も解除すべきです。
2度打ちは寛容なゴルフルールとは認められない!
確かな原因が見つかっていないイップスに配慮するなら、ロングパターの復活もルール改正に盛り込むべきでした。
パッティングでイップスに悩むプレーヤーの多くが、竹ぼうきのようなパターを使うとイップスにならないという事象が出てきて世界中に広まりました。
ところが「入りすぎる」ということで、ルール改正が行われたわけです。
ここで問題なのは、ロングパターの使用を禁止したのではなく、打ち方を規制したということ。
アゴの下に基点を作って振り子の動作をしてはいけないと定めたのです。
ここまで打ち方に踏み込んだルールの規制はなかったので、ゴルフ界は大混乱になったのですが、ルールを制定する委員会は対応することはありませんでした。
イップスの悩みを持つプレーヤーに対して打ち方に規制をかける一方で、同じ悩みを持つ2度打ちには寛容であることは、ダブルスタンダードと言われても仕方がないのではないでしょうか。
誰に対しても公平であることが、ゴルフのルールを制定する上でもっとも重要なことだということを忘れてしまっているような気がします。
2度打ちを無罰にしたゴルフルールは間違っている?
今回の新しいルールを制定するにあたって、2度打ちにペナルティを科すべきという異論はあったようですが、最終的にはノーペナで決着することになりました。
ゴルフがあるがままを推奨するのは、技量に関係なく楽しめるスポーツであるべきと考えたからのはずです。
恣意的にルールの緩和をはじめると、ゴルフの面白さがなくなっていくような気がします。