ここぞという時に力が入り、ボールの行方が気になりヘッドアップ、ドライバーが振り遅れ、結果は大きなスライスで右の林へ。
こうした苦い経験を全てのゴルファーはしたことがあるでしょう。
なぜスライスするのか、その原因さえ分かれば対策を講じ再発を防止することができます。
その原因を多方面から深く掘り下げ、それぞれの対策と効率の高い練習方法をまとめます。
ドライバーショットのアドレスのセットアップが振り遅れの原因?
結論から言うと、答えはNOです。
まず、ゴルフのショット(パッティングを含め)全てに共通している「アドレスのセットアップ」方法の確認から始めます。
コーヒーカップを用意し、太腿が触れる程度に机の前に立ち、両脚、両膝、腰、腹、胸、肩、顔の全てが正体(ここで使用する「正体」の意味は、全ての面が飛球線に向かい均一に揃っている状態を指します)するように、脚を肩幅に開き、体から50cmほど離れた体の中心(ヘソの位置)にコーヒーカップを置いてください。
ゴルフスイングの基本になる「アドレスのセットアップ」体の向きは、ボールの位置に関係なく、この形です。
次に、体全ての向きは変えずに、中心に置いたコーヒーカップを左(右利きの場合)に20cm移動してください。
すると随分と左にあるようですが、ドライバーショットの際、体の向きとボールの位置関係はこの形になります。
「え、こんなに左なの?」と思われた方は、ボール位置に対し上体が正体しており、アドレスの際に肩が目標より大きく左に開いていることになり、スライスを誘発する形になっているはずです。
このまま正確なスイングをすれば、下半身は飛球線に正体しているのに上半身が左向きなので、ヘッド軌道は上半身に影響されアウトサイドインになり、ボールに加わる回転はスライスになってしまいます。
これで振り遅れだけではない原因が見えたでしょうか。
それではどう修正したら良いのでしょう。
振り遅れによるスライス防止は、左右の肩の位置関係が鍵
「こんなに左じゃ右手が届かないよ」と感じた方、その通りです。
だからと言って右肩と右腕を前に出してしまうと正体が崩れてしまいます。
ではどうすればと言えば、脚の間隔を肩幅に飛球線に正体、ヘソの前で両掌を合わせ、膝と腰を少し曲げアドレスの形をとり、掌を合わせた両腕を肩から真下に降ろしてください。
この形、体が正体していれば、鏡で見ると左右対称になっているはずです。
ここが重要なポイントです。
正体を崩さずに左肩を上、右肩を下に動かし、向き合っている掌、右手を半分下に左手を半分上にずらします。
これがアドレスの基本姿勢です。
基本ですが、アドレス時のグリップエンドは体の中心付近(Y字型)で、ハンドファースト(逆K字型)ではありません。
ドライバーが振り遅れて生じるスライス回転、原因の一つはアドレスの姿勢にあります。
もう一度確認してください。
体は正体していますか。
ドライバーの振り遅れを解消するドリル
ここまででセットアップ(体の正体)の大切さを理解していただけたことを前提に話を進めます。
自宅でもできるドリルを紹介します。
バドミントンかテニスのラケット、おもちゃのバット、なんでも構いません。
自宅内で振って危険のないものを用意してください。
椅子に腰掛け、体を正体させ、両腕を水平に前に伸ばしラケット(ここではバドミントンラケット)を垂直にドライバー同様に握ります。
下半身は一切動かさず、左右肩の前後入れ替えをしながらラケットを左右に振ります。
左肩を前に出す際、左腕は曲げずにラケットのグリップエンドを遠くに押し込み、右肩は肩甲骨とともに後ろに引き込み右肘をたたみます。
切り返した後、左手首は掌屈したまま、左前腕は尺骨を中心とした左外旋し、右腕は畳んでいた右肘を前方に押し出し左へ内旋しながら解放、右手が左手を追い越したら、左肩を後ろに引き、右腕を遠くに押し出します。
やってみていただくと分かりますが、思い切った手打ちドリルです。
これが振り遅れスライスを解消する要になります。
振り遅れ矯正ドリル、実行したけれどドライバーのスライス止まらない
ここまでお話した通り体の正体を理解したセットアップができて、肩の入れ替えも完璧にも関わらずスライスが止まらない場合があります。
ただ心配無用です。
これも通過点です。
ここでも止まらないスライスの原因は、セットアップ、肩の入れ替え、肘の伸縮などが原因ではありません。
問題はそのタイミングにあります。
椅子に座ったドリルの際、右腕が左腕を追い越すタイミングは体の正面でしたが、ゴルフクラブの場合、諸般の要素が絡み合い正面では間に合いません。
ドリルを実施した後のこの現象は、違う意味の振り遅れです。
ドライバーの振り遅れを解消するためには、右ひざ前でも遅く、右腰を通過したタイミングで追い越す、右側にクラブを放り投げるイメージが必要です。
これに左前腕の左外旋と掌屈を加え、ドライバーヘッドのトウでボールを打ち抜くイメージ、右手甲が目標に向いてしまう程に右前腕を内旋させるのです。
それでは「当たるわけないし、まっすぐ飛ぶわけない」と思うかもしれません。
しかしながら、ゴルフクラブの構造が変化しない限り、これがゴルフスイングの「基本」なのです。
とても大切な背中と腰の関係
アドレスの時に作った上体の前傾角度は、バックスイングの際は左側屈、インパクト前後は右側屈が入り変化しません。
それを維持するためには背骨と腰の関係が非常に重要です。
極端な反り腰や前屈は悪要素、尻、背中を壁に押し付けた状態(背骨と腰が直線を描く形)が理想です。
極端な反り腰は前傾の伸び上がりを引き起こし、過ぎた前屈はドライバーだけではなく全てのクラブでカット打ち(アウトサイドイン)を誘発、ともにスライスの原因になります。
この直線状態を維持することにより、バックスイング時の左側屈、切り返し後からインパクト付近の右側屈がスムーズになり、アドレス時に作った前傾角度が変わらない、再現性の高いスイングが身につきます。
もちろんこれなら振り遅れも起こりません。
この直線状態を確認する方法ですが、壁に尻と背中を付け、手を腰と壁の間に差し込み、簡単に入ってしまう場合は反り腰の可能性があります。
背中を少し丸める等の調整をし、手が入らない感覚をつかみ、アドレスしてみてください。
慣れれば簡単ですから、是非取り入れてください。
いよいよ最後の仕上げです。
振り遅れスライスを止めるには、ボールと体の距離はどの位が理想なのか
結論から言うと、ドライバーショットのアドレス時に、グリップエンドとお腹の間に、ご自身の拳が3個入る程度が基準です。
これはアイアンも同様で、前傾角度を維持したまま効率よく(自宅室内練習の要領、体の正面に向かった両肩の入れ替え)クラブを振ると、グリップはこの付近を通過するはずです。
あくまでも基準なので微調整は必要ですが、スイング中、グリップは体に引き付けるのではなく、遠くが基本です。
アドレス時に右肩より高い位置にあった左肩を右肩と入れ替え、左拳を右爪先に向け押し込み、右肩を右肩甲骨と連動させながら上に引き上げ、左手首の掌屈と右肘の畳み込みを行ないます。
その結果がバックスイングです。
クラブの動きやヘッドの方向に意識が行き過ぎるのは危険です。
繰り返しになりますが「左右の肩を入れ替えた結果」がスイングの基本です。
近すぎるボール位置はアドレスの前傾角度を崩し、スライス、振り遅れの原因になります。
ゴルフ上達のヒントがたくさん詰まっている
いかがでしたか。
難解な説明になってしまいましたが、ここに記述した言葉の数々には、上達のヒントがたくさん詰まっています。
「掌屈」「内外回旋」「尺骨」などなど、聞き慣れない言葉もです。
ビギナーの方々には、とても難しく感じられたと思いますが、ゴルフスイングの核心部分に触れています。
お時間があるようでしたら、是非、検索し理解を深めてください。
上達への近道になると信じています。