オデッセイ ホワイトホットシリーズ「ツーボール」が発売開始されてからすでに18年近くが経ちますが、この形状、いろいろと素材や構造を変えながらいまだに人気の衰えを感じません。
ツアープロからも絶大な人気を誇るツーボールパター、その性能に迫り、メリットとデメリットについて掘り下げてみましょう。
パター、ツーボールヘッドまでの変遷
ゴルフ発祥の頃、パターの形状はアイアンから派生したL型が主流、スイートエリアが狭く芯を外すと方向や距離が合いにくく技術を要するクラブでした。
そんな中1963年に発売された「ピン アンサー」は、当時の常識を覆す広いスイートエリアを誇り、ミスヒットに強いというメリットが多くのゴルファーの心をつかみました。
そして1960年代後半に、マレット型の「ゼブラ パター」が登場し、ピン型パターの一人勝ちの構図に変化をもたらします。
その後も多彩なアイデアのパターが発売されましたが、基本はこの三つの形「L型」「ピン型」「マレット型」から大きく変わることはありませんでした。
2001年、紆余曲折を経て「オデッセイ」というブランド名で「ツーボールパター」が発売されます。
発売当初は、特異な形状だけが話題になりましたが、「宮里藍選手」や「アニカ ソレンスタム選手」らの勝利を支え続け、基本性能の高さも証明しました。
その後もマイナーチェンジを図りながら基本設計はそのまま、その高い人気を維持しているクラブです。
そこで独特な形に詰め込まれた技術について深堀りしてみましょう。
ツーボールパターの機能とメリット
ツーボールパターの構造における最大の特徴は、広いスイートエリアと高い重心にあります。
ボールに直接触れるフェース面から重心までの距離が長く、芯を外した場合に起こるフェースのブレを少なくすることに成功しています。
アドレス時に目に入る造形も、直線と曲線をたくみに組み合わせ、難しいとされているテークバック初動を優しくサポートしてくれます。
また重心位置の高さにも工夫があり、ボールの重心とパターの重心がコンタクトしやすく設計されており、ミスヒットをカバーするメリットがあります。
打感を作るフェース面への工夫も見られ、異素材埋め込みは他社製品にも見られるものですが、ヘッド形状のツーボールデザインは独特なもので、異素材埋め込みとの相乗効果が高い評価を得ています。
そんなボールが二つ並んでいるデザインに隠された機能について考えてみましょう。
ツーボールデザインのパターがプレーヤーに与えるメリットは安心感
パターというクラブの一番大きな役目は、グリーン上のボールをカップに入れる事です。
開発者が、プレーヤーが狙った方向へ打ち出すことを容易にする機能を研究した際、視覚の残像に注目し、たどり着いた形が3ボールでした。
試作初期段階は、字のままでボールを3個連結しフェースをつけたもの、それは高い方向性を実現しましたが、当時のルールの壁に阻まれ、ボールは2個になり現在に至ります。
フェースバランス構造と、視界に入るやわらかなデザイン、軽く素振りをするだけで、ツーボールパターの「残像現象」を体感できます。
フェースバランスとは、一切固定せずシャフトを水平にしたときにフェースが真上を向く状態です。
テークバックの初動を直線的に引きやすいイメージは、プレッシャーが掛かる場面での方向性への安心感につながり、大きなメリットです。
では、その方向性の秘密とは何なのでしょうか。
ミスヒットに優しいツーボールパター
長い重心距離はミスヒット時のフェースのブレを防ぐ頼もしい機能であり、数ミリのズレならば許容してくれます。
ストロークの際も前述した「残像現象」を利用したヘッドデザインのおかげで、テークバックの方向がわかりやすく、フェースバランス構造も伴い高い方向性を維持できます。
極端にプレッシャーが掛かり、まともに手が動かなかったとしても、高い直進性があらぬ方向へ打ち出してしまうミスを防いでくれるメリットがあるのです。
ツーボールパターは「引いて戻す」というシンプルな再現性の高いストロークを繰り返せるよう設計されていますが、それは全てのプレーヤーが使えるのでしょうか。
次は、このパターを使う上でのパッティングスタイルについて考えてみます。
L型パターにはないツーボールのメリット
通常ショットの場合、左腕手首(右利きの場合)は掌屈し尺骨を中心にした回旋運動を伴います。
掌屈とは、手のひら側に手首を曲げることです。
この動きは小さなアプローチでも同様に起こり、これをうまく機能させないと、ダフリやトップを誘発してしまいます。
L型パターやピン型パターはこの回旋運動に近い小さなフェースの開閉を伴ったストロークを基準に設計されています。
このフェースの開閉を伴うストロークのメリットは、通常のショットに近い動きのため、距離を合わせやすいことにあります。
対してツーボールパターのように重心距離が長く、フェースバランス構造を取り入れているパターは、ヘッドの直進性が高くフェースの開閉が苦手です。
反面、そのフェースの向きが変わりにくい構造は、高い方向性をサポートしてくれるのです。
では、どのようにして距離感を合わせるのでしょうか。
ツーボールパターの性能が生きるパッティングスタイル
ノンフェースバランスのパターはフェースの開閉を伴う円運動に近いパッティングストロークが基本です。
そのため距離を合わせやすい反面方向性にはとてもシビアで、正確なストロークでボールの芯を捉える技術を要します。
その高い技術と再現性を実現するためには、それ相応の練習が必要ですが、身につければ頼もしい武器です。
反面、ツーボールパターのようなフェースバランスのパターは、直線的なストロークでボールをとらえます。
フェース面の動きを最小限に留めることが可能なので、方向性は非常に高くなり、メリット大です。
その直線的な動きを生み出すのは「ショルダーストローク」です。
アドレスの際に胸の前にできる五角形(肩のライン、両上腕、腕で構成される)が崩れないよう、左右肩の上下運動のみで行うものです。
ボールが目の真下、両目からの距離も均等にに来るようアドレスし、ボールの中心にパターの中心をコンタクトするためにパターソールをグリーン面から10ミリほど浮かせます。
下半身を固定、腹圧を高め(腹筋に少しだけ力をため、下半身の安定を図る)両肩の上下運動のみでストロークします。
フェースの開閉を伴わないので、距離感を出すのが難しいと記述しましたが、ツーボールパターを使用し、このシンプルなストロークを身につけると、スイートエリアでのヒット確率が飛躍的に向上します。
正確な距離感を養うために最も重要な要素は「芯でとらえること」です。
同じ振り幅、速度でストロークをしても、スイートエリアを外していると正確な距離感は身につきません。
この方法でパッティングを続ければ、ツーボールパターの唯一の弱点である距離感を克服できます。
セットアップに繊細な注意は必要ですが、そこを間違えなければ、シンプルなストロークでパターの芯がボールの芯を捉えてくれるのです。
ツーボールパターを使用する最大のメリット
芯でとらえることが簡単になれば、パター名手の仲間入り、プレッシャーから解放され1メートル程度のパットが楽しみになるはずです。
このプレッシャーからの解放こそが、ツーボールパターを使用する最大のメリットだといえます。
最後に、ツーボールパターの生みの親は、NASA(アメリカ航空宇宙局)研究員であったDavid Perz(デーブ・ペルツ)氏、このパターが生まれるまでのストーリーは非常に面白いので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
ツーボールパターが欲しくなります。