ゴルフクラブをゆっくり振ると、速く振っていたときよりもボールが飛ぶと言われることがあります。
恐らくミートする確率と、スイングスピードを比較して、ミートしたほうが飛ぶと判断したのでしょう。
今回はそこでゆっくり振ると、本当に飛ぶのか考えます。
ゴルフクラブをゆっくり振ると飛ぶのは本当?
女子プロのゴルフスイングをみると、ゆっくり振っている割りには一般男性ゴルファーよりも飛ぶ距離は長そうです。
ゆっくり振るから飛ぶのか、それとも飛ばすためにゆっくり振っているのか、「タマゴが先かニワトリが先か」の話になっていきそうです。
ただし女子とはいえプロゴルファーですから、ゆっくりしか振れないということはないので、意識的にゆっくり振っていることは確かです。
すでに引退していますが、ゆっくり振る代表格といえば宮里藍プロです。
スローモーションのようなテークバックから、柔らかいダウンスイングでボールをとらえているイメージがありますよね。
実際に試合会場で見ると、打球音もあって鋭いスイングには見えますが、録画などで他の選手と比べると、決して早いスイングとは言えないようです。
世界トップの選手と渡り合った宮里プロですから、技術的には常人とは比べられないほど高度なものがあるでしょうから、宮里プロを見て「ゆっくり振る」と決めるのは早計かもしれません。
ゆっくり振ると飛ぶのはゴルフクラブのスプリング効果
ゴルフクラブをゆっくり振ると飛ぶのかは分かりませんが、少なくともミートする確率は高くなるはずです。
すべてのクラブに備わっているスプリング効果について、顕著なドライバーで確認してみましょう。
最近のドライバーヘッドは、ほぼチタン合金で作られています。
合金というくらいですから金属製のヘッドです。
「金属=重たい」のはチタンも同じことなのですが、チタンはものすごく硬くて強い金属なので、薄い肉厚でボールを打ってもヘッドが壊れることはありません。
金属自体は重くても使ってる量が少ないので、結果的に軽いヘッドに仕上げられるのです。
しかも肉厚が薄くなったことで、ボールはトランポリンのように弾んで飛ばせるようになりました。
それを追求した結果あまりにも飛ぶので、ルールによって「高反発ヘッドは禁止」となってしまったのです。
またヘッドの芯でボールをとらえると、その反発力は増すことになり、各メーカーはこぞって大きなヘッドを作り始めます。
フェース面の広い範囲がスイートエリアとなって飛ぶようになったのですが、これも「大きなサイズのヘッドは禁止」になってしまうほど、飛ぶクラブを作られました。
女子プロはゴルフクラブをゆっくり振るけれど飛ぶ
このスプリング効果を最大限に受けられる箇所が、スイートスポット(真芯)です。
このスイートスポットに当てることができれば、飛距離アップが叶います。
ただあの小さなヘッドの中の「点」に当てるのは至難の業ですし、ヘッドスピードを意識して強いスイングをするほど、点からずれて飛ぶ確率は下がるといって良いでしょう。
より強いインパクトを求めて強振するか、クラブ性能を求めて確実にミートするかの判断は尽きないところですが、多くの女子プロゴルファーは後者を選択してゆっくり振るスイング行っているのは確かです。
対して男子プロは、「強振+ミート」を求めています。
つまり可能性がある限り飛距離を狙うということのようです。
そうでなければゴルフ規則で同じ規制を受けているクラブを使用して、350ヤードなんて飛距離が出るわけはないはずです。
男女のプロの比較で分かるように、ゆっくり振るから飛ぶのではなく、ゴルファーのポテンシャルとスイングが合っているか否かで、スイングスピードを決めているようです。
ゆっくり振ると飛ぶというゴルフのデータがある?
ゴルフクラブをゆっくり振ると飛ぶのかと問われると、レッスンプロの多くは「飛ぶ」と回答する人が多いかもしれません。
理由はスイートスポットでボールをとらえていない人が多いからです。
アマチュアゴルファーの多くは、練習場で目一杯のスイングでボールを引っ叩いていますが、スイートスポット至上主義で練習した経験は少ないはずです。
現在40m/sのヘッドスピードを45m/sにするのは大変なことです。
ドライバーへッドによってスプリング効果が違うので一般論になりますが、40m/sで最長240ヤード、45m/sで270ヤードです。
もちろんスイートスポットに当たっていることが条件です。
一般ゴルファーのヘッドスピードは40m/s前後で、飛距離は220ヤード(ランを入れると230~240ヤード)です。
つまりすでに限界近くまで振った状態からのスイング強化よりも、伸びしろのあるミートする確率を上げた方が効果は早いというのも頷ける話です。
ゴルフクラブをゆっくり振ると飛ぶのは机上の空論とも考えられる
多くの一般ゴルファーは、スイートスポットでインパクトをしていないため、飛距離を損していると言われています。
スプリング効果を得るためにスイートスポットに当てると240ヤード、普段は220ヤードであればその差は歴然です。
ただ飛距離は、スプリング効果だけで伸ばしているわけではありません。
スイートスポットの確率とヘッドスピードの速さで算出する「初速」と、ボールが放物線を描いて飛んでいく「打ち出し角」、そして「スピン量」の3つの条件が整わないと最長距離にはならないからです。
最初のスイートスポットは、おそらくゆっくり振るほうが確率は高くなるでしょうが、ヘッドスピードは遅くなるかもしれません。
そうすると初速は下がり、結果的に飛距離ダウンに繋がることは想像できます。
また打ち出し角やスピン量は、ゴルフスイングの速さとは一応は関係がなく、速くても遅くても技量でカバーする部分なので、ゆっくり振ることが飛ぶというのはデータ上からは見えてこないはずです。
ゆっくり振るゴルフスイングで飛ぶのには技術が必要
最初の話に戻ると、宮里プロのゴルフスイングはゆっくり振っているように見えるけれど、全盛期の飛距離は250ヤード超です。
その飛距離に見合ったミートの確率から逆算してヘッドスピードを考えると、42~43m/sはあったのでしょう。
これは試合中のデータでしたから、もしかするとコントロールを重視してゆっくり振るようにしていたかもしれません。
いずれにしても、一般男性よりは同じヘッドスピードでもはるかに飛びますから、技術さえ知ることができたら、同じように飛ばせるかもしれません。
ちなみに宮里プロは、インパクトゾーンから加速するスイング技術を持っていて、インパクトのヘッドスピードよりもフォロースルーのほうが速かったそうです。
だからこそゆっくり振るように見えても、ボールは常人よりも飛ばせたのかもしれません。
果たしてアマチュアゴルファーが「藍ちゃんのような」ショットを打てるようになれるのか、難しい問題だと思います。
とりあえず男子プロ同様にミートする確率を上げながらも、スイングスピードも速める方向で練習をしたほうが実りは大きいのではないでしょうか。
ゆっくり振るだけでは飛ぶことはない
ゴルフを始めて少し経つと、「ミート率」というゴルフ用語を知って、ゆっくり振ると飛ぶと考えるようになるようです。
もちろん皆無ではありませんが、飛びの3要素である「初速・飛び出し角・スピン量」を考慮すれば、よほどの技術がないとゆっくり振るだけでは飛距離アップは狙えないと考えられます。