ゴルフのルールでは人工物のことを、「障害物」と呼んでいて救済の対象としていますが、動かせるものと動かせないものでは救済方法が異なります。
また人工物と認めずに、救済を受けられないものも存在します。
今回はコース内の人工物の処理の仕方を紹介します。
ゴルフルールに添った人工物の処置を覚えることが重要
ゴルフコースは自然豊かな場所と思われがちですが、一般的には人工的に造成されたものなので、池や樹木は自然にあったものではありません。
緑の芝生の下には、水はけが良いように粒子の細かな砂利や砂を入れ、排水用の管を張り巡らせています。
また夜中になると自動的に散水ができるように散水用の配管などもあって、掘り返すと工場の床下のようになっているものです。
まして橋や道路、茶店などは人工物であることはひと目で分かります。
もちろん造成するときには、なるべくプレーの邪魔にならないようにと配置していますが、それでも支障を来たすことがあるものです。
それらの人工物近くにボールが行った場合、基本的にはルールで定められた救済を受けることができます。
ただし救済の処置を間違えるとペナルティを受けたり、競技失格になる場合もあるので注意が必要です。
また「これは救済が受けられる」と思い込んで、ルールで認めていない救済処置をしてしまうこともあるので、人工物の処置の仕方はしっかり覚えておくことが必要です。
ゴルフルールで邪魔なときに動かすことが認められている人工物
では実際にゴルフコースにある人工物を確認してみましょう。
ルール上では取り除ける人工物を、「動かせる障害物」と定めています。
動かせる障害物とは、時間や労力をかけずに、しかも壊したりせずに動かせるものと決められています。
ゴルフコースの中で代表的なものとしては、池の境界線を示す赤杭や黄杭、修理地を示す青杭がそれに当たります。
こうした動かせる障害物はスイングに支障がある場合や、飛球線の線上にあるものを取り除くことができます。
ここで気をつけたいのは、OBの白杭だけは動かすことができなくて、仮に動かしてしまうと、2打のペナルティを受けることになります。
なお赤杭などは動かせるときだけ動かせる障害物になりますが、簡単に引き抜くことができなければ動かせない障害物になり、処理の方法はまったく違うものになるため注意が必要です。
さらにプレーのために取り除いた障害物は、そのプレーが終わったら必ず元の形に戻しておくことも忘れないようにしましょう。
邪魔な場合は避けて違う場所から打てる人工物のゴルフルールも確認
ゴルフのルールでは取り除くことができない人工物を、「動かせない障害物」と定めています。
動かせない障害物とは、「コースと不可分のもの」ではない人工物のことを言います。
ゴルフコースの中では、橋やカート道路また防球ネットなど、簡単に取り除くことができないもののことです。
動かせない障害物によってプレーに支障があるときは、その動かせない障害物を避けられるもっとも近い点を基点にして、ワンクラブ・レングス以内に無罰でドロップすることができます。
ここで気をつけたいのは、障害物を避けるための「もっとも近い点」についてです。
カート道路にボールが乗っていた場合、進行方向の右サイドはスタンスを置くために、左サイドよりも遠くなります。
つまりもっとも近い点は左サイドなので、カート道路の左横からワンクラブ・レングス以内にドロップをしなければなりません。
なおボールを動かすときには、基点となるもっとも近い点とワンクラブ・レングスに、それぞれマークして、分かりやすいように明示しなければなりません。
人工物の救済ではゴルフルールをしっかり理解しておかないと危険
動かせない障害物は、スタンスがかかっているとき、もしくはスイングで直接邪魔になるときの2つだけが救済を受けられるとルールで定めています。
ゴルフコースに埋めてあるスプリンクラーで確認してみましょう。
ボールがスプリンクラーの上に乗っていれば、スイングの邪魔になるので救済の対象となります。
もっとも近い点はスプリンクラーの左横または真後ろですが、ワンクラブ・レングスは左サイドだけではなく、スタンスとボールの間にスプリンクラーがくるように右サイドにとっても問題はありません。
例えば埋まっているはずのスプリンクラーが飛び出していたとしましょう。
そのスプリンクラーにボールが当たって跳ね返り後方に止まりました。
するとスイングに支障はないけれど、打ち出したボールには邪魔になりそうです。
この状況で動かせる障害物のときは、その人工物は取り除くことができましたが、動かせない障害物の場合には救済はありません。
つまりぶつかることが確実でも打つしかないのです。
ルール上で障害物が動かせるか動かせないかだけではなく、その救済の違いも知っておく必要があります。
ゴルフコースと同一であるとローカルルールで定めた人工物
動かせない障害物の要件は「コースと不可分のものではない人工物」となっていますが、この不可分とされるものも人工物です。
コースと不可分な人工物とは、コースと一体になっている造作物のことで、例えその人工物によってプレーに支障があっても救済を受けることはできません。
ゴルフコースの中では、OB杭がそれに当たります。
また自然岩に見立てた造作物や樹木に見立てた擬木などは、委員会がコースと不可分なものと指定をすれば動かせない障害物の救済を受けることはできません。
特に分かり難いものに石橋があります。
2015年トム・ワトソンとニック・ファルドが、聖地セントアンドリュースに別れを告げ万来の拍手で迎えられたのが、スウィルカン・ブリッジと呼ばれる石橋です。
プレー中にこの橋にボールが接触することはありえないでしょうが、セントアンドリュースは「あるがまま」なのでコースと不可分なものとして扱うことになります。
つまり委員会が定めていなくてもコースと不可分としているわけです。
一般のゴルフコースでは、委員会がローカルルールとして設定しているので、スタート前に確認するようにしましょう。
今年のゴルフルールの改正で人工物の処理方法も変わった
従来のゴルフルールでは、もっとも近い点を「ニアレスト・ポイント」と称していましたが、2019年のルール改正によって「リファレンスオブ・リリーフ」、日本語では救済の基点に変更されます。
これに伴い、コース内の人工物が動かせない障害物となった場合には、リファレンスオブ・リリーフを定めて、リリーフ・エリア(救済エリア)内にドロップしなければなりません。
このときのドロップする高さは膝からに変更されたので、もしも従来の肩の高さからドロップした場合は、再ドロップが必要です。
またリリーフ・エリアから転がり出た場合には、従来だと2クラブレングスまで認められていましたが、新しいルールでは無罰で再ドロップします。
その再ドロップも転がり出た場合には、2回目のドロップでボールが落ちた地点にプレース(置く)して、必ずエリア内からプレーを続行することになります。
もしもルールに従わずにプレーを続けるならば、誤所からのプレーで2打罰のペナルティが科せられるので注意が必要です。
ゴルフルールではコース内の人工物に3つの種類がある
ゴルフのルールに定められている人工物には、池の杭などの動かせる障害物、OB杭のような動かせない障害物、それとコースと一体になっているコースに不可分な人工物の3つがあります。
それぞれの区分を明確に知って、ルール間違いをなくすことが重要です。