ゴルフルールを勉強した「みかん論法」が邪魔になってきた?

ゴルフ規則はルールブックを見ただけでは、なかなか理解できないものです。

昔は、「みかん論法」なるものがあって、ゴルフのあとに楽しみながら覚えたものです。

今回は、そんなルールの勉強に使ったみかん論法と現在の問題点について考えます。

ゴルフのルールを覚えるときの絶好の教材は「みかん」だった

ゴルフではスコアアップを目指すと技量が上がると言われていますが、目標のスコアが出ないと不機嫌になるようなプレーヤーは困りものです。

緊張感がありながらも同伴競技者のプレーを褒め、また自分が褒められたときには、素直な気持ちでお礼を返すことが大切です。

そしてプレーが終了したらレストランで反省会を行って、良い部分と悪い部分を指摘しあうアフターゴルフも楽しみのひとつです。

またルール上で曖昧な部分があれば、ルールブックを開いて同伴者と調べてみるのもゴルフの楽しみとなるはずです。

昔からルールの勉強には「みかん」や「バナナ」を取り上げてきました。

それはバンカーの中に「みかん」が転がっていたとしたとき、その「みかん」は取り除くことができるのかというのが、勉強をする上での最初の問いになります。

ルールブックでは「みかん」を調べても何も出てきません。

そのためみかんがルールブックの何に当たるのかを調べることから始まります。

次にバンカーの中で取り除くことができるものを調べて、ルールの勉強と称して言葉遊びを楽しんだものです。

みかんはゴルフのルール上で2つの解釈ができる

バンカーの中にあるみかんを取り除くことができるのか?

この問いに対する答え方は、単なる推測ではなくルールに基づいてなくてはいけません。

そのためには、みかんという物質をルール上で定める必要があります。

まずみかんを良く見てみましょう。

もしもバンカーの中にあるみかんが皮をむいた状態であれば、食べかけのみかん、もしくはみかんの皮だけということが考えられます。

この場合は、空き缶やペットボトルと同じように「動かせる障害物」に属すると解釈することができます。

一方で丸っとした手付かずのみかんであればどうでしょう?

この場合、枯れ葉や枯れ草また小枝などと同じ周囲の樹木からの落下物である「ルースインペディメント」になるか、もしくは先行するプレーヤーが落としていった「動かせる障害物」になるかを判断したいと思うはずです。

バンカーの中のみかんが動かせる障害物の場合は取り除くことができ、ルースインペディメントの場合には触れることができないと答えたものです。

そして実際にゴルフルールに照らし合わせて、そのページを開いて条文を読み上げて楽しんでいたわけです。

ルールの改正でみかん論法は楽しめなくなった

そんなみかん論法も、いまでは古き良きアフターゴルフとなってしまいました。

当時はみかん論法のあとにバナナ論法を出して、みかんは樹木と一体となっている可能性があるけれど、バナナは輸入品なのでルースインペディメントになる可能性はないという答えを引き出させたのです。

ルールは条文が記載されたゴルフ規則のほかに、裁定集というものがあります。

それは裁判の判例のようなもので、実例を元に条文解釈を明示しているものです。

これによると、周囲に樹木があろうとなかろうと果実はルースインペディメントとされています。

しかも「果物の皮」という裁定には、皮だけのバナナであってもルースインペディメントであると明示されています。

つまり輸入品だろうと食べたカスであろうと、果物は自然物として扱われるのがゴルフのルールなのです。

こんなやり取りを繰り返すことで、徐々にルールを覚えていきましたし、ルールブックが身近なものとなっていったものでした。

「みかん論法」がなくなるとゴルフルールが覚えられない?

答えを知れば「なんだ!」と思うかもしれませんが、こんな他愛もないやり取りを繰り返すことで、ルールに対する応用が利くようになっていったものです。

ところが2019年からのゴルフルールの改正によって、バンカー内では動かせる障害物はもちろんこと、ルースインペディメントも取り除くことができるようになりました。

みかん論法は、日本人にとっては「ルースインペディメント」という、ゴルフで使われる用語を覚えるのに格好の教材だっただけではなく、ルールの解釈の仕方が分かる例題だったのですが、それ以上にルールブックを開くという機会を作るのにも貢献していたとも考えられます。

バンカーという特殊な場所で、動かせる障害物もルースインペディメントも取り除くことができれば、みかんを題材としたクイズの意味はなくなってしまいました。

敢えてルールブックを開く必要もなくなってしまったことで、ゴルファーにとっては今まで以上にルールが遠いものとなっていくかもしれません。

いつまでもネット世界のゴルフルールから「みかん論法」が消えない!

2019年からのゴルフルールは、初心者が迷うことのないシンプルなものに改正されたので、樹木から落ちたみかんとカートから落ちたみかんで扱いが変わるかもしれない、なんて話はなくなりました。

バンカー内でも動かせる障害物と同じ扱いをすることができるようになり、みかん論法の役目は終わったわけですが、新しいルールがシンプルになったことでそれまで以上にルールブックを開く機会はなくなっていき、知らずにルール違反を犯す可能性は高まります。

スマートフォンを使って「みかん バンカー」と検索すれば、すぐに答えが見つかる時代になりました。

そのためわざわざルールブックを開いて探す必要はなくなっているので、それまでもルールを覚える機会も少なくなっていたのかもしれません。

ただ新しいルールがスタートしているのに、ネット上では従来のみかん論法については消えていません。

従来のルールについては訂正や改定が行われているようですが、元々ルールになかった特殊なケースについては、ネット上からいつまでも消えない可能性があるのです。

新しいみかん論法のゴルフルール解説が必要かも!

従来のルールでみかん論法を知っていると、バンカーの中では生きているカニは取り除くことはできるけれど、死んでるカニは取り除くことができないことを知っているはずです。

しかしながら新しいルールでは、カニがどんな状態でも取り除くことができるので、「カニは取り除ける」を知るだけで良くなり、とてもシンプルになりました。

ただ根本となる動かせる障害物やルースインペディメントを知らなければ、「カニ バンカー」でネット検索をするかもしれません。

検索したとき、もしかすると消えていない「みかん論法」に行き当たるかもしれないわけです。

従来のルールを適用しても、死んでるカニに触れないだけなのでルール違反になることはありませんが、不利になることは間違いありません。

できれば新しいみかん論法を作って、従来の裁定から変更になったことをネット上に載せる必要があります。

ただ今のところ新しいゴルフルールにおいては、みかん論法のような粋な例え話はできていないようなので、今後の行方に期待したいものです。

ゴルフルールの改正に対応できていないみかん論法にお知らせ

ゴルフルールの改正によって、従来からある「みかん論法」がルールを惑わす危険性があります。

そもそもルールブックの解釈用の例題だったので、すぐに修正されないかもしれませんが、ネット上でみつけたときには「変わったよ!」とコメントしてあげると良いかもしれません。