ウェッジは飛距離を打ち分けるためにロフト角を分けていない

アイアンとウェッジの飛距離は等間隔のほうが安心感はあり、使い勝手も良いという考え方があります。

一方で状況に合わせた使い方を求めるのがウェッジの役目という考え方もあります。

そこでここからはウェッジのロフト角の意味と目的について考えてみましょう。

ウェッジのロフト角が飛距離を求めていない理由

アイアンとウェッジが違うのは名称だけではありません。

3番アイアンから9番アイアンまでを「アイアン」と呼び、それ以下のクラブはウェッジと呼びますが、同じ形なのにピッチングウェッジ以降でウェッジの名称を使っているのは、1929年に製作者がウェッジと名付けたからです。

1929年まではウェッジというもの自体ありませんでした。

作られた理由は、名プレーヤーのジーン・サラジンが、苦手のバンカー対策として考案したと言われています。

つまり現在のウェッジは、サンドウェッジから始まったものということになります。

ただサラジンは、ウォルター・ヘーゲンが作った木製の「サンディー・アンディー」というクラブ、そして後継の鉄製ヘッドに変わったものをさらに改良してサンドウェッジを作ったと言われています。

ちなみにサンディー・アンディーは、大きなフェースからフライパンと呼ばれたそうですが、ロフト角が58度もあるクラブとして人気があったそうです。

この時点では飛距離のことは考えずに、バンカーからの脱出だけを目的に作られたものでした。

ウェッジのロフト角が飛距離を求めない理由はクサビにある

元々ウェッジの意味は「クサビ」です。

樹木を切り倒すときに打ち込む三角形のクサビと、バンカーに打ち込むヘッドは同じ役割があると考えたのだと思われます。

この時点でウェッジに対して飛距離を求めるよりも、打ち出す角度を求めたことが想像できます。

つまり重要だったのはロフト角と、バンカーに潜らないようにするバンス角だったはずです。

そうしたサンドウェッジから波及して、たくさんのウェッジが作られることになりますが、根本はクサビを打ち込むショットだったということ。

この歴史の流れを考えると、9番アイアンの次のクラブがピンチングウェッジとはならないのが正しい解釈ということになります。

ただゴルフクラブの飛距離は、昔に比べると格段に伸びていますから、セカンドショットの位置がグリーンに近づいてきています。

その中には9番アイアンの次のクラブが必要と考えても不思議ではないはずです。

現在のくくりではピッチングウェッジまでがアイアンセットになっているようで、番手間の飛距離は10ヤード刻みで設定されています。

ウェッジの番手の飛距離とロフト角との関係

ピッチングウェッジがアイアンに組み込まれたことで、3番アイアンから順に飛距離10ヤード刻みでピッチングウェッジまで下りてきます。

ロフト角を等間隔に設定することで、飛距離も一定になるので、クラブ選択での迷いはなくなるはずです。

ところがアイアンがストロングタイプだと話は違ってきます。

例えばゼクシオ・テンの9番アイアンは38度で、ピッチングウェッジは43度なので、ロフト角の差は5度ですが、アプローチウェッジは49度もあるので差は6度差となります。

飛距離10ヤードのロフト角は4度差が目安ですから、6度だと15ヤード差という計算が成り立ちます。

アイアン間の飛距離が10ヤードから15ヤードに変わるだけでも大変なのに、グリーン周りからクサビを打ち込むウェッジでその飛距離差は、アプローチを難しくしてしまうと考えられませんか。

おそらくそれはメーカーも分かっているのかもしれません。

そのため6番アイアンから9番アイアンまでの4本セット、ピッチングウェッジを含む5本セット、サンドウェッジまでの7本セットが用意されています。

4本セットや5本セットは、自分で好みのウェッジをセットしてくださいというスタンスだと思われます。

現在のウェッジのロフトピッチでは飛距離を刻めない?

9番アイアンの飛距離の2倍が、ドライバーの飛距離と言われています。

9番アイアンが120ヤードであれば、ドライバーは240ヤードの飛距離です。

この9番アイアンとの番手間の距離は10ヤードですから、7番アイアンなら140ヤード、ピッチングウェッジは110ヤードということになります。

この飛距離110ヤードのピッチングウェッジの次はアプローチウェッジですが、一般的なアプローチウェッジの飛距離は90ヤードです。

そしてサンドウェッジの飛距離は80ヤードですから、ピッチングウェッジとアプローチウェッジのロフトピッチだけ歪にができています。

9番アイアン以降のウェッジは別途購入するとしても、すでにアイアン化しているピッチングウェッジは等間隔であるほうが使い勝手は良さそうです。

一方でスタンダードタイプのアイアンであれば、9番アイアンは110ヤード、ピッチングウェッジは100ヤードですから、アプローチウェッジの90ヤードとの整合性は取れています。

アイアンが飛ぶ時代になったことで、飛距離で選ぶべきか、用途で選ぶべきかを判断する時期が来ているのかもしれません。

ウェッジのロフト角は飛距離ではなく球筋を変えるためのもの

原点のクサビを考慮して、ウェッジはその役割に徹するべきという考え方があります。

サンドウェッジは、バンカーから脱出することを一番に考えていますから、そのサンドウェジの飛距離を問うことはないはずです。

それはロブウェッジにも言えることで、10ヤード先にターゲットを定めてピンポイントに落とすこと、止めることに徹する道具ですから、フルショットの飛距離は別のクラブで対応するべきです。

このように、アプローチの場面を想定して、その用途に限定して使うクラブがウェッジという考え方です。

そもそも論で考えれば、これこそがウェッジの原点なのですから、何の問題もないでしょう。

そうなると番手間のロフト角の差は意味がなくなります。

エプロンやカラーからのアプローチ用ウェッジであれば、バンス角が小さくトップの心配がないものを選び、ピンポイントを狙うならロブショット用のウェッジ、さらに深いラフから振り抜けるようにバンスの大きなウェッジを選べば良いだけです。

あとはロフト角を選んで球筋を決めれば、用途にあったウェッジが揃うはずです。

ロフトを活かしたウェッジの使い方を知れば飛距離は必要ない

アプローチには流行があるようです。

少し前までは初心者から上級者まで、グリーン周りはピッチエンドランが主体でしたが、近年は名前こそ知っていても、ピッチエンドランの打ち方を知らないゴルファーが増えてきているそうです。

これはグリーン面がポテトチップスのような形状になってきたため、転がして寄せるアプローチが難しくなってきていることが要因のひとつになっているようです。

ピッチエンドランが使われなければ、ピッチングウェッジを活用する場面は限られてきます。

必然的に110ヤードの飛距離を出すアイアンとして使われることが多くなり、ロフト角を考えるとグリーン周りで使われる機会は少なくなっています。

一方で極力ミスを出さないプレースタイルこそが結果に繋がることはご承知の通りです。

アマチュアだからこそ、転がすアプローチを習得したほうがスコアアップは期待できます。

パターと同じ構え方で振り子のストロークをするだけで、ボールはグリーン面を転がりピンそばに寄ります。

ピッチングウェッジだけではなく、アプローチウェッジやサンドウェッジでも同じ打ち方ができればスコアアップは期待できるでしょう。

ウェッジの成り立ちを知ればロフト角で飛距離は刻まない

ウェッジの成り立ちを知れば、飛距離を刻む道具でないことは分かるはずです。

ウェッジのロフトは飛距離を打ち分けるものでなく、ターゲットに向けての球筋を打ち分けるためのものだと認識してください。

正しい活用法を覚える第一歩に、改めてピッチエンドランを学習してみてはいかがでしょうか。