ロングアイアンが安定しないときは、ユーティリティを使うことが当たり前のようになってきています。
本来の目的とは違い徐々にその用途が拡大しているユーティリティについて、その成り立ちから現況、さらには今後について考えていきます。
アイアン型とウッド型のユーティリティの違いは歴史で分かる
最近のユーティリティはいわゆるアイアンのようなシャフトの先端が太いタイプが主流になっていますが、以前はウッドシャフトタイプも結構ありました。
いつの間にかタイプは絞り込まれてきましたが、それぞれに特色の違いがあるため流行に流されることなく、自分にとって使いやすいタイプを選ぶようにしたいものです。
まずユーティリティの歴史を振り返ってみましょう。
20年ほど前にゴルフクラブに革命が起きます。
扱いにくいロングアイアンをカバーできるクラブとして、ユーティリティが生まれたからです。
もっとも、当時は「混合」という意味のハイブリットという名称が使われていました。
名前の通りフェアウェイウッドとアイアンを混合したハイブリットは、フェアウェイウッドのヘッドにアイアンのシャフトを組み込んだように見える現在主流となっているタイプです。
ダフリのないヘッドに短くて太いシャフトはミート率が良く、操作性も高いために人気を博すことになります。
人気が出ると後発品が現れるのはゴルフ界も同じことです。
ウッド型とアイアン型ユーティリティの違いは飛距離?
アイアンタイプのユーティリティがゴルフ界を揺るがしているとき、フェアウェイウッドを主体にした同系のクラブで、「役に立つ」という意味のユーティリティが作られます。
先発ハイブリットとの違いはシャフトです。
ハイブリッドはアイアンのシャフトにウッドのヘッドを装着していたので、基本的な打ち方はアイアンショットです。
ところが後発のユーティリティのシャフトは少し短いウッドタイプのため、基本的な打ち方はフェアウェイウッドのスイングになります。
日本のコースは隅々まで綺麗に整備されていますから、フェアウェイタイプのユーティリティで問題ありませんでしたが、世界的に見るとアイアンタイプのハイブリットに人気が集まったようです。
ただ当初は後発のユーティリティに人気があったことは、現在この名称を使用し続けていることから分かるでしょう。
アイアン型ユーティリティの違いはレスキューにある!
アイアンタイプのユーティリティが復権したのは、ハイブリットのもう1つの名称であるレスキューの登場によります。
「救出」という意味のレスキューを名称に使っていたことで、用途は推測できると思いますが、深いラフから長い距離を打つときに助けてくれるクラブとして、この名称が受け入れられたようです。
ハイブリットとレスキューに違いはありませんが、当時はハイブリットが米国、レスキューは英国で使用されたようです。
伝統的なコースレイアウトを考えると、英国では飛距離よりもリカバリーを主眼に置いたのかもしれません。
なによりも打ち方が簡単だったことが挙げられます。
ウッド系のクラブは総じて、スタンスの中心よりも左側にボールを置き、払い打つようにスイングをします。
ところがアイアン系のクラブは、ボールをスタンスの中心に置くことができるため、スイングの最下点とボールの位置が一致し、シンプルなスイングができることが人気を盛り返す要因だったと考えられます。
その根本にあるアイアン型ユーティリティの違い
アイアン型のユーティリティが席巻していますが、元々ユーティリティをキャディバッグに入れた理由を考えると、不得意なロングアイアンをサポートするためです。
3番アイアンや4番アイアンはティーアップしたボールであれば、ある程度ボールをつかまえることはできますが、芝の抵抗を受けるとフェースの角度が微妙に狂って、方向や距離が合わなくなってしまいます。
そこで芝の上からロングアイアンを使えるようにしたのがアイアン型のユーティリティです。
ティーショットでも使うことはありますが、そもそもの狙いは芝からのショットに使うためだったわけです。
ところがロングアイアンに変わるのが同じタイプのユーティリティであれば、パワー不足と感じる人が多かったのでしょう。
実際に多くのゴルファーは、3番アイアンと5番アイアンの飛距離に違いはなく、ミート以外の問題も抱えていたと考えられます。
そんな中、ウッド型はシャフトの性能で飛距離をカバーできるため、パワー不足の多い日本国内では「ユーティリティ」が支持されたと考えられます。
アイアンとユーティリティを区分する言葉の違い
ゴルフには和製英語がたくさんあって、「フェード」はその代表例ですが、当たり前のように使われている「ナイスショット」も、実際の掛け声とは違いがあるようです。
ユーティリティは「UT」と表示していますが、海外では前述したように今もハイブリットやレスキューが使われています。
発祥から考えると、ユーティリティのほうが後発ですから、和製英語と考えても良いのかもしれません。
しかもアイアン型が主流となってきていることを考えると、「役に立つ」よりも「混合」というハイブリットのほうが的確な名称かもしれません。
一方では使い方を表したものが、必ずしも名称とならなかった場合もあります。
すでに世界中でピッチングウェッジという名称はスタンダードでしたが、本間ゴルフはあえて10番アイアンと名付けます。
当時は転がして寄せるアプローチ方法が主流でしたから、ピッチエンドランで使うピッチングウェッジに違和感がなかったのでしょう。
ところが時代が進むとピッチングウェッジは距離を刻む道具となり、たくさんの種類のアプローチウェッジが作られたように、もはやピッチングはウェッジとしての役割は少なくなっていますが、ほとんどのメーカーで10番アイアンに変更する空気はありません。
アイアンを凌駕するユーティリティが違いを示す時代
アイアンを凌駕するほどユーティリティは進化して、当初の目的であるロングアイアンだけではなく、ミドルアイアンやショートアイアンに近いものまでカバーするようになってきています。
ここまで来るとアイアンを補完するクラブではなくなり、ユーティリティという新しい区分が成立したようです。
総重量やロフト角の刻みを考えると、全体的な統一感ができて使い勝手も良くなってきています。
新しい区分ができると、ルールで定められた14本以内という決まりの中で、淘汰されていくクラブが出てきます。
すでにロングアイアンやフェアウェイウッドの一部はユーティリティに置き換えているゴルファーが多くなっています。
また市販されているアイアンセットも従来とは違い、5番アイアンからがスタンダードモデル、さらには6番や7番からのセットまで登場したように、徐々にユーティリティはアイアンの区分に侵食しているようです。
やがてはミドルアイアンもユーティリティ化して、しかも飛距離を活かして少ない本数で済むようになることでしょう。
ウェッジが多様化する時代から、ドライバー、ユーティリティとウェッジだけの時代が到来する可能性もあるのかもしれません。
アイアンとウッドの違いを混合したユーティリティの今後は?
アイアンやフェアウェイウッドとは違い、他のクラブの補完として生まれたユーティリティは徐々にその性能が認められて、現在ではアイアンやフェアウェイウッドを抑えて、セカンドショットで選択されるクラブの中心になってきています。
今後はユーティリティを選択した後に他のクラブを決めていく時代が到来するかもしれません。