アイアンをフォージドに変えると飛距離は伸びるのか?

アイアンのヘッドの製造方法には以下の三つがあります。

①フォージ:鍛造(たんぞう)

②キャスト:鋳造(ちゅうぞう)

③ハイブリッ:複合

鍛造と鋳造、ハイブリッドの違い、そしてどのアイアンが一番飛距離が出るかなど説明していきます。

フォージドアイアンとは

フォージドアイアンは鍛造という製造方法で作られています。

鍛造は金属素材を加熱して柔らかくし、ハンマーやプレスで金属を叩いて鍛える製造方法です。

刀鍛冶が作る日本刀、高級な包丁などがこの製造方法が使われています。

出来上がったクラブはフォージドアイアンと呼ばれ、この製造方法を採用しているアイアンにはほぼ「FORGED」の刻印が入っています。

フォージドアイアンは必ず軟鉄を使っていると思われがちですが、素材が全て軟鉄とは限りません。

硬めのステンレス素材で作られたフォージドアイアンもあります。

そのため軟鉄で作られるフォージドアイアンは軟鉄鍛造と呼ばれています。

フォージドアイアンの特徴は以下の通りです。

①打感が柔らかく打音も良い

②購入後にライ角やロフト角が調整できる

一般的にフォージドアイアンは飛距離よりも、柔らかい打感の良さや抜けの良い打音に惹かれて購入するゴルファーが多いようです。

多くのプロゴルファーはこのフォージドアイアンを使用しています。

正確なボールコントロールが求められるプロにとって、自分の体型やスウィングに合ったクラブに調整して仕上げることが重要だからです。

キャストアイアンとは

キャストアイアンは、鋳造という製造方法で作られています。

鋳造とは金属を溶かし、鋳型に流し込んで形にする製造方法です。

「ロストワックス」と記載されていると、鋳造製法で作られています。

鋳造製法は型に素材を流し込んで作るため、複雑な形のものを作ることができるのが特徴です。

鍛造では作れないような硬い素材や複数の素材を組み合わせたりすることもできます。

鋳造のアイアンには軟鉄より硬いステンレスやチタンを使ったアイアンが多く販売されています。

型さえ設計してしまえばあとは大量に製造できるので、フォージドアイアンよりは比較的価格の安いアイアンを作ることができます。

キャストアイアンの特徴

①ヘッドを複雑な形にできる

②複数の素材を組み合わせることができる

キャストアイアンはヘッドの形状の豊富さにより、自分に合った打ちやすいクラブが選べます。

打感に関しては硬い感じですが、複数の素材を組み合わせることで、フォージドアイアンより楽に飛距離を出せるようになっています。

ハイブリッドアイアンとは

ハイブリッドアイアンとは、種類の違う素材を組み合わせて作られています。

例えばクラブフェースには軽い素材のチタンを使い、フェースとソールの間にポリマーをかまして打感を良くしたりしています。

またクラブの外枠は重い合金で固めて、全体の重量と重心のバランスを調整して操作性の高いクラブに仕上げているものもあります。

さらにフェースは硬くて薄いチタンを使って、ボディだけ軟鉄鍛造という組み合わせもあります。

アドレスしたときの見え方は、フォージドアイアンのスリムな形状にも仕上げることが出来るのもハイブリッドアイアンの特徴です。

打感はクラブによって異なりますが、鍛造や鋳造のどちらとも違う感じで、打音もそれぞれ違います。

ユーティリティが好きなゴルファーは、悪くない打感と打音かもしれません。

ボールも打ちやすく、球筋も真っ直ぐな高弾道で、飛距離も期待できる構造になっています。

バックフェースも素材を組み合わせることで、デザイン性の高いクラブに仕上げることができます。

ハイブリッドは機械加工と組み立て作業の工程が多くなり、比較的高価なクラブが多いようです。

三種類のアイアンの飛距離の比較

フォージド、キャスト、ハイブリッドアイアンの飛距離を比較してみましょう。

単純にボールを飛ばすには、キャストアイアンが良いでしょう。

フォージドでは製造できないような硬い素材や、重さが違う複数の金属素材を組み合わせられるからです。

硬く反発の強いチタンをフェースにして、重いステンレスをボディにすれば飛距離が伸びます。

スイートエリアも広くして安定したボールが打てるヘッドにすることもできます。

タングステンのような比重の重い金属を使ってクラブの重心を下げることで、ボールが上がりやすい形状にすることも可能です。

最近は飛距離が出るモデルが多いのは確かです。

キャストアイアン以上に飛距離が伸びるのは、ハイブリッドアイアンです。

キャストアイアン同様に素材の組み合わせが可能で、金属以外の素材も組み合わさっています。

そのためユーティリティに近い性能のクラブも製造できます。

最近のぶっ飛び系と呼ばれるアイアンはハイブリッドタイプが多いです。

一番飛ぶのはハイブリッドアイアンで、飛んで値段が手頃なのはキャストアイアン。

打感が良いのはフォージドアイアンといったところです。

しかし多くのプロゴルファーは飛距離の劣るフォージドアイアンを使用しているのは何故でしょうか?

次でフォージドアイアンの特徴を説明します。

フォージドアイアンは飛距離よりも正確性と操作性が求められる訳

前にも少し触れましたが、多くのプロゴルファーがフォージドアインアンを使用するのは、ライ角やロフト角が調整できるからです。

ライ角を自分のスイングに合わせて調整ができるので、より自分に合ったクラブに仕上げることができます。

プロがアイアンに求めるものは、飛距離以上に正確性と操作性です。

狙う場所にボールを落とすにはイメージ通りのスイングでフィーリング通りにボールを打たなくてはなりません。

フォージドアイアン以外は、スイングをクラブに合わせる必要があります。

基本的に自身のスイングとフィーリングを調整できるクラブは、フォージドアイアン以外にありません。

もちろんキャストでも自分専用の型を作ってもらえるのであれば可能かもしれませんが、現実的ではありません。

柔らかい軟鉄素材を叩いて凝縮させると非常に密度が高い鉄になっていきます。

この密度の高い鉄は、ボールを打ったときの振動が少なく、スイートスポットに当てるとさらに振動が少ないと操作性も高まります。

振動が少ないと狙い通りにボールが運べます。

プロゴルファーがフォージドアイアンを使用する理由として、これらのメリットが挙げられます。

あなたがアイアンに求めるものは正確性なのか飛距離なのか?

アイアンに求めるものは飛距離よりも正確性です。

この正確性を突き詰めるとフォージドアイアンに行き着くはずです。

もちろんそこまで拘らない初心者は、フォージドアイアンを選ばなくとも良いでしょう。

ボールの飛距離や直進性、ミスの寛容さを求めるのであれば、キャストアイアンを使用したほうが良い結果が期待できます。

ハイブリッドアイアンなら、ユーティリティとうまく組み合わせることで、中長距離も正確に打てるクラブセットが完成します。

アイアンは総重量のバランスも大切です。

7番アイアンをスイングしたときに少し重いくらいが丁度良いと言われています。

軽すぎるとボールがブレ、重すぎると振り切れないのでボールは飛びません。

キャストやハイブリッドアイアンは軽いシャフト装着のモデルが多いため注意が必要です。

どのアイアンにもメリットとデメリットはつきものですから、特性を十分に理解することが大切です。

自分のゴルフスタイルとコースマネジメントに合ったアイアンを選びましょう。

フォージドアイアンの最終形とは

フォージドアイアンを選べば飛距離は伸びません。

しかしながら飛距離よりも自分に合わせた調整ができて、操作性や正確性を向上させるアイアンです。

フォージドアイアンの最上位にマッスルバックアイアンがあります。

このアイアンはゴルフクラブという道具と工芸品の美しさも備えた品格があります。

そんなマッスルバックを使いこなせるようになると間違いなく上級者と言えるでしょう。