アイアンに求めるものは何でしょう。
アマチュアゴルファーの大半は、使いやすくてやさしいクラブということではないでしょうか。
アイアンヘッドの素材には、軟鉄という軟らかい素材やステンレスのような硬い素材もあります。
言葉のイメージから、軟らかいとやさしい、硬いと難しい感じがしますが実際はどうでしょうか。
こうした素材や製造方法などを知ったうえでアイアンを選ぶことも大切です。
今回はイメージではなく、素材や製造方法についての情報を説明していきます。
素材を知ってやさしいアイアンヘッドを選ぶ
アイアンヘッドに使用される素材は、純鉄、軟鉄、ソフトステンレス、チタン、高強度ステンレス、ハイテンションスティールが素材として使われています。
ヘッドが軟らかいと、簡単でやさしいイメージが湧くようですが、それはあくまでも感覚の話です。
具体的に軟らかい軟鉄の成分は99%以上が鉄で、残り僅かが炭酸マンガンなどでできています。
そうした成分の違いは分からなくても、素材が軟らかいヘッドはインパクト時の衝撃が手にしっかり伝わってくるので、打感の良さは分かります。
打感が良いとなんとなくやさしく感じるのかもしれません。
何よりアイアンは方向性を重視しますので、自分のスイングに合ったライ角調整ができる素材を選ぶのがポイントです。
純鉄からソフトステンレスまではライ角の調整が可能な素材と言われます。
打感は素材とヘッドの厚さで決まり、打音は硬い素材ほど高い音になり、軟らかいほど低い音になります。
打感や打音は打ち比べてみると良く分かるはずです。
試打会などで素材の違いを比べてみるのも面白いのではないでしょうか。
自分に合ったやさしいアイアンは、素材の特性を知ることで選択の幅が広がってきます。
アイアンヘッドの製造方法
アイアンヘッドは以下のような製造方法で作られています。
①フォージド:鍛造(たんぞう)
②キャスト:鋳造(ちゅうぞう)
③上記2つを複合したハイブリッド
①のフォージドアイアンは、金属素材を超高熱で柔らかくし、ハンマーやプレスで金属を叩いて密度を高めていく製造方法です。
日本刀の製造方法がこれにあたり、なんとなくサムライっぽいところが良い感じがします。
この製造方法を採用しているアイアンにはほとんど「FORGED」の刻印が入っています。
フォージドアイアンは必ず軟鉄を使っていると思われがちですが、硬い素材で作られたフォージドアイアンもごくわずかですがあります。
そのため軟鉄で作られているフォージドアイアンは、軟鉄鍛造と呼ばれています。
②のキャストアイアンは金属をドロドロに溶かし、鋳型に流し込んで作る製造方法です。
素材を鋳型に流し込んで作るため、複雑な形や複数の素材を組み合わせることができます。
叩いてもあまり変形しないような硬い素材のステンレスやチタンを使ったアイアンも多く販売されています。
③のハイブリッドアイアンは、種類の違う素材を組み合わせて作られます。
例えばクラブフェースには軽い素材のチタンを使って薄くし軽量化を図ったり、フェースとボディの間にポリマーをかまして振動を抑制し打感を良くしたりしています。
クラブの外枠を重い合金で固めて、重心を深くし、慣性モーメントを高めた高性能なクラブに仕上げています。
ハイブリッドアイアンは、ユーティリティに近いため、初心者や女性には特にやさしいクラブかもしれません。
ここで説明したように、ヘッドのは形状は素材の違いや製造方法により変わってくることも知識として持っておくと、アイアン選びの選択肢が広がります。
アイアンヘッドの最高峰は軟鉄鍛造のマッスルバックなのか
一般的にアイアンのヘッドはソールが広いと重心が深く低いためボールが上がりやすく、ダフりやトップのミスにやさしいクラブと言えます。
反対にソールが狭いアイアンは、重心が浅く高いためソールが滑りにくくミスに対して厳しいクラブと言えます。
アイアンヘッドの形状は、「キャビティバック」、「中空」、「マッスルバック」の3タイプに大別されます。
●キャビティバック
バックフェースをくり抜き、そのくり抜いた分の重量をヘッドの外側に配置することで、スイートスポットを広くして、ミスにも寛容にしています。
さらにキャビティ部分を深く余剰重量をソール側に配置して重心を下げれば下げるほど、ロフト角以上にボールも高く打ち出せます。
飛距離が出やすくミスに寛容なやさしいアイアンと言えます。
●中空
文字通りヘッドの内部が空洞になっており、ヘッドの後ろ側にボリュームを持たせたユーティリティに近いアイアンです。
ボールは上がりやすいうえに、キャビティアイアン以上に弾き感が出るため、飛距離に拘るゴルファーにおすすめです。
●マッスルバック
トラディショナルなアイアンヘッドの形状で、ヘッドが小さくフェースも薄めです。
アマチュアゴルファーには難しいアイアンかもしれません。
そう感じるのも、操作性が高く、打点位置の操作によってスピン量を調整できるように重心が高めに設計されているからです。
多くの男子プロゴルファーが軟鉄鍛造のマッスルバックアイアンを良く使いますので、このクラブはアイアンの最高峰と言えるかもしれません。
マッスルバックアイアンがもっとも軟鉄アイアンを象徴していますので、もう少し説明を加えます。
やさしいアイアンに仕上げられる軟鉄鍛造アイアン
多くの男子プロゴルファーが軟鉄鍛造のマッスルバックアイアンを使うのは、ライ角やロフト角を自由に調整できるからです。
柔らかい軟鉄素材を叩いて凝縮させると密度の高い鉄になります。
この密度の高い鉄は、ボールを打ったときの振動伝達が綺麗で、スイートスポットに当てたときの振動の少なさから、ボールの食いつきを実感できるほどです。
またライ角を自分のスイングに合わせて調整ができるため、より自分にとってやさしいスペックに仕上げられます。
プロゴルファーが軟鉄鍛造アイアン使用する理由として、こうしたメリットが挙げられます。
正確性と操作性が求められるシビアなプロの世界では、狙った場所にボールを落とすにはイメージ通りのスイングでフィーリング通りにボールを打たなくてはなりません。
マッスルバックアイアンは、プロゴルファーや上級者が使ってこそ最高のパフォーマンスを発揮しますが、それは調整によってやさしく仕上げたからです。
冒頭にも書きましたが、アマチュアゴルファーの大半は、使いやすくやさしいクラブを求めていることでしょう。
プロと同じように、軟鉄鍛造のアイアンを自分のスイングに合わせてライ角調整すれば、自身に合ったやさしいクラブに仕上げることができるかもしれません。
軟鉄鍛造アイアンのメリットとデメリット
軟鉄鍛造のアイアンは調整によってやさしくも難しくもなるのですが、メリットとデメリットを考えます。
最大のメリットは、ここまで説明してきたように、やはりライ角やロフト角を調整できることです。
正確性と操作性を求めると、自分の体型やスイングに合ったクラブに調整して仕上げることが重要だからです。
身長の高低により、腕の長さも長かったり短かったりするので、ライ角の調整は必要不可欠です。
調整することでスイングとのギャップがなくなりアイアンのやさしさが増しますので、狙った方向へ打ちやすくなります。
必然的にベタピンや寄せワンが増えてスコアはアップすることでしょう。
ただしそう何度も調整ができるものではないということだけは認識しておいてください。
調整を繰り返すことでメッキが割れたり、ヘッドそのものが折れてしまうことがあるからです。
それから軟らかい打感や抜けの良い打音は気持ちを上げてくれるのもメリットと言えるのではないでしょうか。
対してデメリットは調整できるほど軟らかい素材ですから、クラブ同士がぶつかって簡単に傷ついたり、フェース面が芝や砂噛みによる傷もつきやすくなります。
それから鋳造製造に比べて製造コストがかかり、販売価格は高めなことです。
軟らかいものは強度的に硬いものより金属疲労が激しく寿命が短いかもしれませんが、アマチュアゴルフファーの練習量を考えるとそこまで気にすることもないかもしれません。
しかしながら高額なものが多いことから、お財布に厳しいのが最大のデメリットだとも言えます。
やさしいアイアンを選ぶ方法
ここまでやさしいアイアンを選ぶために、ヘッドの素材や製造方法などを説明してきました。
最後にそこに組み合わせるシャフトについても考えてみます。
シャフト次第でヘッドの性能は最大限引き出せるからです。
アイアンにはスチールシャフトとカーボンシャフトがあり、素材の違いは鉄か炭素繊維の違いです。
スチール製は重いイメージですが、今では超軽量スチールもありますから、重さは総重量で確認しましょう。
アイアンは少し重いくらいがインパクトを揃えるのに丁度良く、重すぎるとヘッドスピードの低下やダフリのミスが起きやすくなります。
反対に軽すぎるとクラブが振れすぎて打点が暴れたり、ヘッドスピードが速くなり過ぎて飛距離にバラつきが生じます。
すると無意識のうちにヘッドスピードを抑えようとしてスイングが緩んで、結果的にミート率が低下するようにもなります。
シャフトの硬さはヘッドスピードで選ぶのが一般的で、ヘッドスピードとフレックスの関係は以下の通りです。
基本的にクラブ選びで参考にするヘッドスピードはドライバーの数値です。
X:46~
S:42~50m/s
SR:40~45m/s
R:38~42m/s
L:28~34m/s
この数値をフレックス選びの参考にしてください。
ヘッドとシャフトのバランスを考えて、やさしいアイアン選びの参考にしてください。
アイアンは調整次第でやさしさは大きく変化する
アイアンはブレなく正確にコースを攻めることができて、飛距離が一定でやさしく扱えるものを選ぶことが大切です。
何か欲張りな気もしますが、それには自分のスイングにクラブが合わせられる軟鉄鍛造のアイアンがおすすめです
軟鉄鍛造だからといって最高峰のマッスルバックを選ぶのではなく、見た目もやさしい軟鉄キャビティは種類も多く選びやすいでしょう。
そしてそれを購入時のまま使うのではなく、調整するのが当たり前と思って必ずスペック変更を検討してください。