普通のゴルフスイングでは、トップの位置から右肘を下に向けて落とすことになりますが、この動作を意識したことはあるでしょうか。
今回は右肘を落とすときの方向と、その右肘による飛距離アップの方法、また正しい捻転のフォームを紹介します。
右肘を落とすゴルフスイングで理想に近づく?
ゴルフスイングでもっとも大事なことはインパクトです。
アドレスでセットしたフェースの位置に再現するように、テークバックやダウンスイングまたトップの形などで理想を求めています。
その理想の1つに「右肘を落とす」と言うのがあります。
トップで作ったコックを維持してインパクトの直前で解放すると、飛距離がアップすると言われています。
そこでコックを直前で解放するためには、ダウンスイングでコックの形を崩さないようにしなければなりません。
そのためには左手甲でターゲットをとらえる円のスイングではなく、右肘を真っ直ぐに落とす動作をしたほうが、結果的に直前までコックの形を維持することができると言うものです。
ここまでの話にもっともだと思う人と、異論のある人がいると思います。
そこでトップから右肘を落とすダウンスイングの是非について考えていきますが、その前に「コックとは」について再確認しましょう。
コックを使うゴルフには右肘を落とすスイングが必要
ゴルフクラブを握ってソールをセットしたとき、左腕とシャフトの角度は120度程度です。
基本的にはこの手首の角度でインパクトをするのですが、テークバックしているうちに角度がきつくなってトップでは90度になります。
この90度の手首が「コックが作られた」もしくは「コックが固まった」と言います。
一方でインパクトの前には、アドレスのときの120度の角度に戻さなくてはいけません。
その戻す動作を「コックをほどく」もしくは「コックをリリースする」と言います。
テークバックをすれば自然に作られるコックを、ことさら重要視するのには理由があります。
飛球線の後ろからトップの姿勢をみると、正しいコックつまり手首が90度の角度になっていれば、グリップから伸びるシャフトとヘッドは飛球の延長上にあるはずです。
この理想の形からダウンスイングをして、コックのリリースと左手甲をターゲットに向ける動作を一緒にすることで、シャフトは90度左回転をするので、ヘッドスピードが加速します。
つまりコックを使うと飛ぶと言うことなのですが、右肘を落とすダウンスイングすれば、さらに飛距離アップすることになります。
右肘を落とすゴルフスイングは諸刃の剣?
右肘を落とすことで飛距離が増大する理由は、インパクトの直前までコックをリリースするタイミングを我慢できるからです。
インパクトの直前にシャフトを90度左回転させることで、スイングスピードにプラスされたヘッドスピードが加わり、飛距離アップに繋がると考えられています。
シャフトを左回転するタイミングとインパクトのタイミングがピッタリ合えば、強烈な衝撃を与えることができるからですが、少しだけ遅れるとフェースが開いてスライスしますし、早すぎるとシャットフェースになってフックします。
つまり右肘を真っ直ぐに落とすゴルフスイングだけで飛距離アップするのではなく、それどころかコックをほどくタイミングがずれるとミスショットになる、諸刃の剣でもあるわけです。
したがって意識的にコックをコントロールするスイングは、ハイリスク・ハイリターンになる可能性が高いと言うことが分かるでしょう。
一方で、右肘を落とすスイングは間違いと言う考え方もあります。
右肘を真っ直ぐに落とすゴルフスイングは間違い?
そもそもトップの位置でグリップを支えているのは右手です。
一般的に「ゴルフスイングは左手主導」と言われますが、トップの高さを維持できているのはグリップを下から持ち上げている右手のお陰です。
すでに左手主導のゴルフスイングは過去のものであって、両手がそれぞれの役割を担ってゴルフスイングをするのが現在の考え方になっています。
トップでの右肘の向きも、過去のスイング理論とは違うものになりつつあります。
従来からトップの位置では、右肘で地面を指す姿勢が正しいとされていました。
いわゆる「出前持ち」のように、右耳の上に手のひらを広げて、お盆を乗せるようなフォームが正しい姿勢といわれていて、そのときに右肘は地面を指しているのです。
ところが現在のテークバックでは、「両肩が一対である」という考えが主流なので、左肩が90度回転してアゴの下に入ったとき、右肩も90度回転して背中になければなりません。
従来の右耳の横にトップの位置があると、45度しか回転していないことになるので、捻転不足になってしまいます。
この背中に右肩がある場合、右肘を落とすスイングはできません。
ゴルフスイングで右肘は右腰に向かって落とす
テークバックの左肩90度の回転は、結果であって目的ではありません。
目的は捻転すること、つまり軸を中心に身体を捻ることで、その最大値が90度と言うことになります。
飛球線に対して両肩は平行にアドレスしていますので、軸を中心に回転すると左肩の可動域が90度移動した場合、右肩の可動域も90度回転するよう一致しなければなりません。
すでに多くのプロゴルファーやジュニアゴルファーは、このスイングを取り入れています。
彼らにとってコックをリリースするために、ダウンスイングの始動で右肘を落とすことはありえません。
しかもこのフォームでは右脇が開いていて、右肘は浮いて地面を指してもいません。
これでも十分に捻転しているので、「脱力」することで自然にグリップを落とすと、正しいゴルフスイングになります。
グリップが下に落ちるのと同時に、捻転は元の位置に戻ろうとして、斜め前方に向けて本格的なダウンスイングとなっていきます。
このとき右肘は下に落ちるのではなく、自分の右腰に向かって落ちるのが正解です。
右肘を落とす2つのゴルフスイングで正しいのはどっち?
正対する2つのスイング法ですが、結論から言うとどちらも間違っていません。
ゴルフスイングには「流行り廃り」があって、現在はトップの位置を低くして右肩を回すスイングが主流です。
一方で多くのゴルファーは、トップの位置を高く掲げる旧来のスイングフォームを目指して練習をしています。
必ずしもトップを低くするボディーターンのスイングが正しいとは限りません。
アスリートのような肉体の持ち主であれば右肩を背中まで引くことはできますが、週1のゴルファーにとっては厳しいフォームと言って良いからです。
きつく感じるまで捻転することは良いことですが、限界を超えるとスエーしてしまうはずです。
ここで最初の言葉を思い返してください。
「ゴルフスイングでもっとも大事なことはインパクト。」
「アドレスでセットしたフェースの位置に再現する。」
つまり再現性の高いフォームこそが大事なことなのです。
自分にとってどちらのスイング法が正しいインパクトになるかを決めてから、右肘を真っ直ぐに落とすのか、右腰に向けて落とすのかが決まるはずです。
右肘を落とすゴルフスイングで必要なことは脱力
新旧のゴルフスイングの理論を基に考えても、ダウンスイングの始動で右肘を落とすことは変わりません。
従来からのスイングでは右肘は地面に向けて落とし、新たなスイングでは右腰に向けて落とすことになります。
ここで注意しなければならないのは、右肘を落とすときは「脱力」が必要になると言うことです。