「ボールが空に吸い込まれるように飛んでいく。」
これがゴルファーの醍醐味です。
誰しもそんなドライバーを打てたら、さぞかし気持ち良いだろうと想像します。
ただそれはよほど腕力や筋力がないとできないだろうなと思うかもしれません。
しかしながら、腕力や筋力がなくても飛ばすためのスイングができれば飛距離は伸ばせます。
今回は、そんなスイングにするための一つの理論と方法を紹介します。
ドライバーは唯一飛ばすための道具
具体的な方法に入る前に、全体的なドライバーショットのイメージを述べておきます。
もちろんドライバーは一番飛ばすクラブです。
逆に言えばその他のクラブはドライバーより飛んではいけないのです。
そのためにわざわざスイングが速くならないようにドライバーより重く設計されています。
スイートスポットももっとも広く、ティーも高くできるので、ダフリやトップも出にくいようになっています。
つまり、ヘッドの重心からズレても許される許容範囲が広いというクラブなのです。
したがって精密機械のように正確にインパクトをするイメージより、スイング全体の流れの中で、インパクトをイメージして欲しいのです。
後述しますが、インパクトはアドレスの再現ではありません。
頭も動かしても良いのです。
そして、体のどこかを動かない様に我慢するといったことはどこにもありません。
スイングで飛ばす3つの要素
力ではなくてスイングで飛ばすための要素は「体重移動」「回転」「同調」です。
まず「体重移動」とは直線的な体の動きで回転運動を生み出すことです。
例えば、重りを付けた紐をグルグル回そうとするとき、その手は円運動より直線的に動かしています。
エンジンで言えばピストンの動きのイメージです。
それから「回転」は2種類あります。
自転と公転です。
例えば地球は1日に1回転自転をし、太陽の周りを1年で1回転公転をします。
この自転の回転軸は背骨です。
この軸はアドレス時には傾きがありますが、トップからフィニッシュにかけて立っていきます。
ここでは逆C型フィニッシュよりI型フィニッシュの立場を採ります。
また公転の回転軸は、左右の足の間のどこかに垂直に立っていて、これが体重移動で足の間で垂直を保ちながら移動します。
「ハンマー投げ」のイメージです。
最後の「同調」とは、体の回転をどうクラブヘッドに伝えるかです。
車に例えるとギアシャフト、バイクならチェーンの役割です。
それには多少の「ねじれ」が必要です。
バックスイングでできたねじれを、ねじり戻ししないようにすれば同調します。
具体的な方法は後述します。
ここでは、たくさんねじってそれを戻せば飛ぶというような理論は採りません。
ドライバーでは特に力のいるスイングになるからです。
飛ばすスイングにする体重移動
ドライバーで飛ばすには体重移動が欠かせません。
体重移動とはバックスイングで右足体重になり、トップからフィニッシュにかけて左足体重になることです。(右打ちの場合、以降同様)
そこで少し極端な実験です。
バックスイングで100%右足体重になるということは、左足を浮かせられるはずです。
アドレスの形をとり、そのまま左足を浮かせてみようとしても、なかなか浮きません。
今度は右足の上に頭を移動させると浮かせられます。
つまり体重移動は頭を動かさないとできません。
この理屈ではスタンスの幅分頭が動いて良いことになりますが、一本足打法をするわけでもないのでそれは極端なのですが、それくらい頭の動きを制約する必要はない、むしろ多少し頭を揺さぶって体重移動をするくらいの気持ちでいて良いということです。
回転で飛ばすドライバーショットにするスイングに
前項で自転の回転軸は背骨だと述べましたが、その背骨を回す役割は下半身の動きです。
これは竹トンボを飛ばすときの手の動きと同じ役目です。
竹トンボは軸を右手が押し込むようにして、左手は逆に手前に引きます。
極端に言えば、アドレスの左右の足の位置がフィニッシュでは入れ替わっていれば、回転していることになります。
それくらい、左足は逆飛球方向へ引いてくるのです。
それと同時に公転もします。
公転の回転軸はバックスイング時に右足寄り、トップからフィニッシュにかけて左足寄りに移動します。
その結果として、「左の壁」と「右足の蹴り」と言われるような動きになるわけです。
左足は自転するために逆飛球方向に引く動きと、公転軸が飛球方向に移動する動きと相殺しているので、決して「アドレス付近で、左足がスウェーしないように我慢する」わけではありません。
右足は自転するために右サイドを飛球方向に押しやる動きに加え、公転軸も飛球方向に移動するので、スタンスの広いドライバーショットでは特にあたかも蹴っているように見えるのです。
回転にドライバーが同調するスイングとは
いくら体が回転したとしてもその回転力がドライバーヘッドに伝わらなければ意味がありません。
そこでまた、簡単な実験です。
実際にクラブを持ってアドレスの形をしてください。
ヘッドを動かさずに腰を左右に回そうとすると、ある程度なら回るはずです。
ただこれはクラブと体の動きが同調していないからです。
つまり、前述した通りインパクトはアドレスの再現ではないことを意味します。
そこでアドレスの形からヘッドを動かさずに腰を左に回していって、これ以上回したらヘッドが動いてしまう地点の形が、クラブが体に同調したインパクトの形です。
もちろんこれはインパクトの瞬間だけのことですから、スイング全般にわたって同調する方法をしなくてはなりません。
それは、両肘の形や角度に気を付けます。
まずバックスイングでは、左肘が少しだけ曲り右肘はもっと多く曲がることになりますが、どちらの肘も(特に右肘は)肘でできる矢印が下を向く、少なくとも上方向に向かないことです。
そしてトップでできた両肘の各々の角度をインパクト過ぎまで極力保ちます。
感覚的にはトップの右肘を真下に下ろして来ます。
左の二の腕がろっ骨の平らな部分と平行に降りてきて、左肘を丹田(へその10センチくらい上)の近くに持っていきます。
右腕はソフトボールのピッチャーのように手首が右腰に当るくらいに持っていってください。
つまり飛ばすための両肘は、右腰が左肘と右肘で挟まれるような形になります。
ドライバーショットを飛ばすスイングにする練習方法
これまで述べてきた飛ばすスイングの感覚を体感するための練習方法を2つ紹介します。
1つ目はゴムチューブ等を使います。
右肘とズボンの左前ポケット辺りのベルト通しと、背中側を通して結びます。
ゴムの長さはアドレスの形の時にたるみがなくなるくらいが調度良いです。
それで、なるべくゴムが伸びないように素振りします。
実際にクラブを持っても良いです。
左サイドの引きつけと、右腕の力感が感じられるはずです。
2つ目は長めのクラブを使ったトレーニングです。
ドライバーのような長めのクラブのヘッド側を持って、シャフトが背骨の延長線になるようにして、グリップの先端を地面に付けます。
これでゆっくりボディーターンをしてください。
前述の自転のみのスイングだと、このグリップの先端が動かず一定です。
自転と公転が同時にできると、グリップの先端が右足付近に移動します。
これを繰り返し、自転と公転を同時にする感覚を覚えていきましょう。
飛ばすためのスイングを一言でまとめる
ここまで述べてきたスイングを一言で言ってしまうと、「レイトヒッティング」です。
体が回転しきってから後でボールが出てくるようなショットを打つことです。
しかしこれだと振り遅れてスライスするのではないかと疑問を持たれると思いますが、グリップがしっかり体の近くにあれば振り遅れしないはずです。
もし、もっと飛ばしたいと思ったときは、是非参考にして一度試してみてください。