パターのロフト角はインパクトでマイナスになっている?

パターにもわずかですがロフト角はあり、そのロフト角によってインパクトの瞬間に浮いてから転がり出すことで、芝の抵抗を受けずに済みます。

しかしながらパッティングフォームを分析すると、多くのゴルファーはロフト角をマイナスにしているようです。

今回はパッティングフォームとロフト角の関係、また芝の状況から選ぶべきロフト角について考えていきます。

ロフト角0度のパターがマイナスに作用する理由とは

パターのフェースは一見すると真っ直ぐに立っているように見えますが、実際には他のクラブと同様にフェースの斜度であるロフトはあります。

一般的なパターのロフト角は2度程度で、少し大きめのロフト角で4度といったところです。

このロフト角によってストロークしたボールは、一旦浮いてから着地して転がり出します。

もしもロフト角がなければ、ボールは進行方向にスライドして、グリーン面との間に摩擦抵抗が現れてしまいます。

この抵抗によって一瞬だけバックスピンのような状態になり、進行方向がわずかにずれたりカップの手前で止まったり、パッティングにとってマイナスに作用してしまうのです。

一応パターのロフト角は、10度以下でなければならないとルールで定められているため0度から10度まで、もしくはマイナスのロフト角でも問題はないことになっています。

ロフト角10度はドライバーのロフト角と同等ですから、構えたときに違和感はないかもしれませんが、実際にストロークしてボールが浮いてから着地するまでのタイムラグに違和感はあるかもしれません。

パターを構えるとき実際のロフト角がマイナス6度の理由

2度程度のロフト角があるパターに扱いやすいと感じる人が多く、市販されているパターの多くは1度から2度のもので揃えられているようです。

しかし本当に2度程度のロフト角が好まれているのかと言えば、どうもその話は違っているようです。

メーカーは抵抗のない転がり具合を分析して、2度前後のロフト角のパターを基本モデルとして販売しています。

店頭で5度以上のパターを見ることはほぼないでしょうし、またロフト角がマイナスのパターも見たことはないはずです。

それは需要がないから作らないというわけではないようです。

多くのゴルファーはパターを構えるときに、グリップを左腿に近づけてハンドファーストにしています。

ハンドファーストで構えると、シャフトが左側に傾くため、ロフト角よりもフェース面は立つことになります。

仮にロフト角が2度でも、グリップを左腿内側の前で構えると、フェース面はマイナス8度程度になるので、実質マイナス6度のロフト角で構えていることになります。

パターをハンドファーストで構えるとロフト角はマイナスに!

ロフト角に合わせてパターを構える人は少ないかもしれません。

本来はスクエアグリップで握り、グリップを体の中央で構えたときのロフト角がプラスマイナスゼロの正しいパターの構え方のはずです。

ところがボールの位置を左側に置いたりグリップを左側で構えたりと、自分にとってスクエアにフェースを合わせやすいところでパッティングをしようとするために、ボールの転がりに大事なロフト角を無視してしまうことが多いようです。

この「無視する」というのは悪いことのように思えますが、この場合は「正しい」とも解釈できます。

現行のパターの大半がロフト角2度のものが販売されていますが、プレーヤーの多くはマイナスを望んでいると考えられるわけです。

もしもパッティングフォームが「それ」であるなら、マイナス8度の構えを考慮したロフト角10度のパターこそが、理想の転がりができる打ち出し角2度になるはずです。

つまりハンドファーストで構える人の多くは、ロフト角10度のパターがもっとも合っているとも考えられるわけです。

ロフト角マイナス8度の構えを想定したパターはあった!

ルール上、パターのロフト角は10度まで許されていますが、実際に店頭で調べてみると分かるように、10度のパターを探すことはできないでしょう。

需要がないから作っていないのかもしれませんが、正しい打ち出し角を2度としているのであれば、ハンドファーストでマイナス8度になる構えをしているゴルファーを考えると、10度のパターは必要なはずです。

ゴルフ界のリサーチ力は、他業種と比べても抜きん出ているほうですから、メーカーが推奨するロフト角と、プレーヤーが作るリアルロフト角の差異を知っているでしょう。

それでもロフト角10度のパターをお目にかかることはないばかりか、ロフト角5度のパターすら遭遇するのは稀なはずです。

実は2010年ころ、ロフト角の大きなパターに注目が集まったことがあります。

ロフト角6度で販売されたマクレガーのパターは、店頭からなくなるほどの人気となったことがあります。

そうなると他社も追随するのがゴルフ界で、飛ぶ鳥を落とす勢いだったオデッセイが5度のロフト角のパターを発売しました。

ロフトがマイナスにならないバックストライクのパターとは

オデッセイから発売されたロフト角5度のパターは、シャフトがヘッドの後方ついているかなり特殊なタイプです。

そのころのオデッセイのパターは、ボールに見立ててボールと同サイズの白丸がフェースの後方に2個ついていました。

その2個目にシャフトが挿さっている、かなり不思議なスタイリングのパターが『バックストライク』です。

シャフトの接続部分よりもグリップの位置が左側にあるパターは、必然的にハンドファーストと同じ構えになり、フェースがマイナスになることなくロフト角通りのストロークができるようになります。

この不思議なスタイリングのパターによって、カップ前で止まることはなくなり、順回転で転がりの良いパッティングができるようになりました。

そんなに凄ければ、多くのゴルファーはバックストライクのパターを持っていたはずですが、普及しなかった理由は柔らかいベント芝が普及したことと、超音波測定器によるデータの分析結果にあったようです。

いまどきのパターはマイナスのロフト角に移行している?

気温18度を超えると枯れると言われるベント芝は、日本では当初北海道・東北のゴルフ場でしか育成できなかったのですが、メンテナンス法の進歩と種苗改良を重ねた結果、高温地域でもベント芝のグリーンが使われるようになりました。

この新たなベント芝の普及は世界的な傾向で、「本来のグリーンの芝」として多くのゴルフ場が改修をしていきます。

ベント芝の特徴は柔らかさにあり、芝目よりも傾斜でパッティングラインが読めることにあります。

さらに芝の柔らかさは抵抗が少ないことに繋がり、使用するパターのロフト角は1度以下が最適と言われています。

また超音波測定器によって、活躍するプロの打ち出し角が測定できるようになります。

多くのプロたちはアッパーブローでストロークして2度程度の打ち出し角が最適だと分かります。

打ち上げた結果が2度なのですから、構えるときは2度よりもマイナスのロフト角であることが分かります。

もう少し分析を進めると、『ロフト角+アッパーブローの打ち出し角=5度』でも、ストロークの速さとヘッドの重さで実際の打ち出し角は3度程度と分かります。

パターの打ち出す角度はストロークの強さによって常に変わることが分かり、さらにロフト角通りに打ち出すことはできないことも分かったわけです。

しかも、芝の質によって抵抗力が違うため、「このパターでなければ」という絶対性がないことも分かったのです。

結果として、ロフト角がいくつであろうと、自分にとって「扱いやすいパターが最良」というのが現在の考え方となっています。

良いパターはロフト角がマイナスになる日が来るかもしれない

パターは打ち出すときの角度を考えて、ロフト角2度程度が良いと言われています。

しかしながら打ち方を分析すると、インパクトのときにロフト角はマイナスになっているようです。

さらにトッププロのデータを分析やベント芝の普及を考えると、1度以下が良いパターとなってきたとも言われます。

このように最適ロフト角はまだまだ見つかりそうもありません。

そのため、扱いやすいパターを見つけ自分なりのストローク方法を探求するのが最善策だと考えられます。