ドライバーのアドレスで重心を気にすると上達できない?

ドライバーのアドレスに入るとき、重心を気にしていませんか。

重心は体のバランスを表す言葉として使われていますが、一方では回転軸としても使われていることがあります。

今回はゴルフにおける重心のあれこれを紹介します。

ドライバーでアドレスするときに使う重心とは

ドライバーを構えたときに、「重心はどこに置くべきか」を考えると、面白いことが分かってきます。

一般的に重心とは、体の中心を指す言葉であり、ゴルフでは背骨を表す言葉になります。

ゴルフスイングは背骨を中心軸に円の軌道を描くように振るので、軸が中心となると考えられるからです。

この考え方は間違ってはいないかもしれませんが、実際にゴルフをしたことがある人にとっては、少しだけ無理のある説明になっています。

骨盤の中心から立ち上がる背骨は確かに体の中心部にありますが、それは直立していることを前提にしています。

つまり背骨を1本の線としたとき、スイングの「中心線」と考えることはできます。

ところが実際にアドレスでは前傾姿勢をとっていますから、その重心は前傾していることになります。

体の回転を考えたときには、「背骨」が重心で問題はありませんが、体重のバランスを考えると、重心は必ずしも1本の線ではないと考えられます。

アドレス時の重心が分かりにくい理由

体が前傾姿勢をとった時点で、重心は中心線ではなくなっているのかもしれません。

この中心線の考え方は、スイングを頭上から見たときに、ドライバーが弧を描いてスイングしている状態をイメージしたものです。

しかしながら実際のスイングは頭上から見ても、体は前傾しているから弧を描いてはいません。

良くスイング軌道を表すときに使われる、「斜めのスイングプレーン」になっています。

しかもトップでのグリップ位置は、前傾姿勢をしている頭の後ろにグリップがあり、ボールはその少し前にあるため、もしも上から見ることができれば、ほぼ縦のスイングになっているはずです。

つまり円の回転というほどの動作はしていないわけで、イメージする回転軸も実際には違っていることが分かります。

さらにアドレスからテークバックまでの間に、「重心を右足の上に移動する」と言われます。

中心が移動しながら弧を描くと言えば、太陽の周りを回りながら自転する地球のようですが、それを重力のある地表でスイングにするのには無理がありそうです。

アドレスでの重心とは点を表す言葉なの?

ドライバーのスイングが背骨を中心に回転しているように見えるとしたら、それは先入観から来ているかもしれません。

実際にアドレスからテークバックをするときには、左肩甲骨は外側に開いて右肩甲骨を内側に移動させています。

体を捻ることでパワーを溜めているわけではなく、背中の筋肉を左に伸ばして右に縮めることで力強いスイングができているのです。

ただしこの動きを外側から見ると、肩が回転しているように感じるのでしょう。

特に左肩を90度回転させることが捻転であり、背骨を中心とした円のスイングと錯覚しているのかもしれません。

ここから肩甲骨の移動がスイングの源と考えたとき、重心は肩甲骨の間にあるはずです。

この場合は中心線ではなく中心点としての重心となるため、地球に例えれば重力の中心点であるコア(内核)になるでしょう。

ここで最初の問いである「重心はどこに置くべきか」を考えると、左右の肩甲骨の間が答えになるのではないでしょうか。

バランスが保てるアドレスの「重心」

重心を体重分配の中心、つまりスイングによって体は常に変化しているため、前後左右のバランスの中心が重心であるという考え方もあります。

これはゴルフの指導教本でも良く使われる、「つま先体重」や「かかと体重」、また「内腿に体重をかける」と、それぞれの場面で使われています。

ドライバーのスイングでは、3番目の「内腿に体重をかける」を使うことが多いようです。

アドレスからテークバックに入るときに、体が右側に流れないように意識的に「右の壁」を作ります。

体のアウトサイドでこの壁を設定すると、地面を踏みしめる足底の外側に体重がかかるため、ドライバーを右サイドで操作している上半身は壁を越えることになります。

そこで足底のインサイドに体重をかけると、上半身は右サイドに流れることはありません。

床に雑誌を置いて、右足の中心よりもアウトサイドで雑誌の端を踏んでから、テークバックをすると、容易に右腿の内側に体重がかかっていることが実感できるはずです。

この場合の重心は、右腿の内側にあるのでしょうか。

ドライバーショットでは重心の意味を置き換えて使ったほうが良い

ドライバーのスイングを説明するときに、都合の良い言葉が「重心」だっただけで、実際に突き詰めてしまうと迷いが出てくることになります。

アドレス時の重心は、左右のバランスを考えるとスタンスの中央ですし、前後のバランスを考えると足裏の土踏まずの辺りでしょうか。

また、アドレスからテークバックを開始するときには、肩甲骨の間が重心となりますし、テークバックが開始されると右腿の内側が重心となります。

こうなると体中が重心だらけで、何を「基本の重心」定めたら良いのかを迷ってしまうかもしれません。

特に体重移動によって飛距離を伸ばすドライバーの場合には、ポイントとなるものが不明確になりやすいように思われます。

そもそもゴルフにとっての重心が、中心線なのか中心点なのかも不明確で、さらに言うと力点なのか作用点なのかさえ、都合によって使い分けていることが分かります。

ゴルフにおいては重心という不明確な言葉ではなく、回転軸とか背骨、体重またはバランスといった言葉を使ったほうが分かりやすいかもしれません。

アドレスで重心を見つけてもドライバーの飛距離は伸びない?

不明確な表現方法である「重心」ですが、ゴルフでは多用されています。

主に体重の中心として使われるときは、ダウンスイングで「重心を左側に移動する」とか、アドレスで「重心がつま先にかかっている」と表現することがあります。

言い換えれば「左足体重に」「体を起こして」なのですが、直接的な表現法を使わないのは、ゴルフの伝統的な指導法から来ているのかもしれません。

そんな重心ですが、ドライバーを構えたときに「重心はどこに置くべきか」という冒頭の問いに対して、腰の中心というのが今回の答えです。

そもそも腰から前傾するゴルフのアドレス姿勢を考えると、「重心」に答えはないので無理やりに作ったものと言えます。

地面から立ち上がる下半身と、前傾する上半身の接点となるのが腰です。

つまり腰を基点にしてスイングは成り立っているわけですから、下半身の末端である足裏と、上半身の最頂部である頭上の中心点が、この要となる腰ということになります。

ただ重心を突き詰めたところで、ドライバーの飛距離がアップするのかは微妙なところかもしれません。

「重心」を使うと分かりにくいことがある

ドライバーでアドレスの姿勢をとったときに重心を考え出すと、上手くスイングができなくなってしまうかもしれません。

ゴルフにおける重心という言葉、時々に違う意味で使われる便利な言葉ですから、もしも重心を使ったスイング解説を受ける場合には、ハッキリと何を指しているのかを確かめたほうが良いかもしれません。