ドライバーのスライス防止に手首を固定したらマイナス効果?

ドライバーがスライスするとしたら、それはオーバースイングに原因があるかもしれません。

そのオーバースイングを矯正するためにテーピングなどで手首を固定する方法はありますが、プレー中に装着しているとルールに抵触する場合があります。

今回は手首の固定によるプレーの援助とスイングへの影響について考えます。

手首を固定してドライバーを打ったら違反になる?

「プレーの援助」というルールをご存知でしょうか。

ゴルフ規則では、プレーの援助を受けることを禁止しています。

違反すると1罰打ないし2罰打のペナルティを科せられる場合があります。

実はこの「援助」の判断は微妙なものとなっているのです。

規則にある『プレーヤーの行動』では、「すべての面で誠実で正直でなければならない」と規定されています。

スポーツマンシップの観点からすると不思議なところはまったくありませんが、これを守っていないと判断されると、1罰打ないし2罰打のペナルティを受ける場合があります。

ただし誰がこの不誠実を判断するのかが問題なのです。

ゴルフ規則では委員会に対して、「独自の行動規範を作って違反したものに罰を科す」ことを推奨していますので、不誠実と断定するのは委員会ということになります。

手首を痛めたプレーヤーが、包帯やテーピングで手首を固定してドライバーでショットをした場合、プレーの援助ととるか治療目的ととるかを委員が判断することになります。

一般的にこの委員とは、ゴルフ規則に精通する競技委員であり医師ではありません。

手首を固定してドライバーを使うとプレーの援助と認定?

ゴルフ場における競技委員は、倶楽部の理事会もしくは競技委員長の指名によって就任するのが一般的です。

委員に選ばれるくらいですから、もちろんゴルフ規則に精通していますが、競技者として経験も考慮することが多いようです。

競技者の中には医師などの医療関係者がいたとしても、手首の包帯やテーピングを見ただけ、または問診だけでプレーの援助に当たるかを判断するのは難しいはずです。

また医師の資格があっても診察なしで判断を下すと、医師法の「無診治療等の禁止」に抵触する恐れがあるので、本人の申告の通りに受けざるを得ないはずです。

そのため「診断書を必要とする」という内規を作って判断することも考えられます。

しかしながらゴルフをしていると、突然手首や肘を痛めることは珍しくありません。

昨日までは手首の故障をなくても、出場前の練習で痛めることもありますし、プレー中に痛くなることだってあり得ます。

また実際ドライバーを素振りさせて、手首の固定がプレーの援助になるのか、痛みを防止するものなのか、もしくは再発を防止するものなのかを瞬時に判断するのは難しいはずです。

ドライバーに有利な手首な固定を委員会は判断できない?

手首を固定した状態でティーグラウンドに立った場合、委員会はどのように判断するべきなのでしょう。

トップの位置で左手首が甲側に折れるとオーバースイングになり、この状態でドライバーを振り下ろすと、ヘッドが遅れてインパクトが安定しなくなります。

そうした手首が甲側に折れるのは「クセ」になっていることが多く、矯正するための専用サポーターが市販されているほどです。

もちろん矯正グッズを使用して競技に臨むことはできませんが、治療目的もしくは再発防止のために手首を固定するサポーターやテーピングは認められています。

この申告が真実であるならば、プレーの援助には当たらないわけですが、仮に真実でないとしても「再発防止のため」と申告を受けたら、認めないわけにはいかないはずです。

医療に対して知識がないのに、申告が虚偽だと判断することはできません。

そうだとするとゴルフ規則によるプレーの援助の判断は、委員会ではなく競技者本人ということになります。

つまりゴルフ規則が推奨している「委員会が不誠実を判定する」ことはできないと考えてもおかしくないでしょう。

手首を固定できればドライバーの振り遅れは解消する

オーバースイングがマイナスになっているプレーヤーが、矯正するために手首を固定したとしても、「ドライバーのスイングに手首が耐えられない」「治療を目的とする」と申告すれば、額面通りに受け付けざるを得ないわけです。

ちなみに手首を固定して試合に出場きる一般的なケースは、「治療目的」を掲げていることが多いのですが、石川遼選手は長期間二の腕にサポーターをつけていましたから、予防を兼ねてもOKだったと考えられます。

手首でなくても理由なくサポーターを装着すると、プレーの援助とみなされますので、当初は治療目的で、その後は再発防止と考えられます。

国内であれば「遼くん人気」を忖度することはあるかもしれませんが、米国ツアーでも装着していましたので、「誠実で正直な使用法」と認められていたことが分かります。

仮にプレーヤーの申告の仕方によって、手首の固定が認められるのであれば、ドライバーショットの振り遅れは解消することができるということになります。

固定する前にドライバーのスイング分析が必要

オーバースイングになるのは、急激なテークバックがトップの位置でストップしたためにドライバーのヘッドがオーバーしてしまう場合と、トップでグリップを握る左手の小指が緩んだことで左手首が甲側に折れてしまう場合があります。

どちらもグリップを高く上げることを意識しすぎたことが根本です。

高い位置から振り下ろすことでヘッドスピードが速くなる、もしくは綺麗なスイングフォームになると思い込んでいるからでしょう。

ただそれだと背骨を軸とした捻転するスイングが置き忘れになって、グリップを引き上げることから、右肘が浮いて右脇が開くスイングフォームになっていることが多いのです。

傍から見ると左肩が下がり、体が左側に湾曲した歪なフォームなのですが、自分ではスムーズなテークバックと高い位置からのダウンスイングができていると思っているかもしれません。

予期せぬスライスをフックグリップやハンドファーストで修正しようとしても、ヘッドが遅れてインパクトを迎えるのですから、思うような成果を得ることはできないはすです。

ここで左手首を固定するだけで、急激なテークバックによるオーバースイングを防げる可能性が高まります。

そのためには一度自分のスイングを動画撮影して、「第三者の視点」で分析することが重要です。

ドライバースイングにマイナス影響もある手首の固定

スマホなどでドライバーのスイングを撮影して、第三者の視点で確認すると、オーバースイングは直ぐに発見できます。

トップで左手首が甲側に折れるのは、テークバックの「リズム」と「クセ」が原因ですから、根本はゆったりした捻転するテークバックを身につけなくてはいけません。

しかしながら一度身についてしまったリズムやクセはそう簡単に消すことはできません。

そこで消えるまでの間、矯正用のサポーターやテーピングを左手首につけて、甲側に折れないように固定することがおすすめです。

大事なことは、このテーピングを外して、本番のラウンドに望むことです。

これはルールやスポーツマンシップの観点ではなく、手首を固定したことで柔軟性がなくなり、コックを使うスイングができずにスライスしてしまうからです。

つまりオーバースイングは矯正できても、スライスして飛距離の出ないドライバーショットになる可能性が高くなるということなのです。

手首を固定するドライバーのスイングは慎むべき!

トップの位置で左手首が甲側に折れると、ドライバーのヘッドはオーバースイングになります。

防ぐ手段として手首にテーピングやサポーターで固定する方法がありますが、自由度が失われるので恒常的な使用はマイナスになると言えます。

なによりもスポーツマンシップの観点から、例えルールで認められたとしても、「プレーの援助」に繋がる行為は慎むべきです。