アイアンショットが難しい理由の1つに、シャフトの長さが違うため、アドレスの姿勢が番手ごとに違うことが挙げられます。
もしもシャフトの長さを同じにしたら、同じスイングで打ち分けることができるのでしょうか。
そこで今回はアイアンの長さがスイングに与える影響について考えます。
ロングアイアンと同じ長さのユーティリティなら簡単に感じる?
一般的にゴルフを始めるときは、アイアンを使って練習することが多く、アイアンが苦手という人は少ないと思います。
ただ「得意なクラブは?」と聞かれると、必ずしもアイアンを選ぶことはないかもしれません。
アイアンはフェアウェイで払い打つレベルブローと、ディボットやラフに沈んだボールに打ち込むダウンブローのスイングがあります。
この打ち分けの複雑さが苦手だったり、球筋を打ち分けることが苦手だったりということがあります。
このようなときは、アイアンの中でも比較的自信のある番手を選ぶことになるはずです。
苦手意識についてはそれぞれに要因はありますが、ロングアイアンの長さに1つのヒントがあるのかもしれません。
単に長いからミートが難しいのではないようで、ロングアイアンとほぼ同じ長さのフェアウェイウッドやユーティリティを使えることを考えると、アイアンヘッドそのものに難しさがあると考えられます。
同じアイアンでもシャフトの長さとロフト角で飛距離は違う
同じ番手の刻印があっても、ロフトの立っているアイアンがあります。
例えば7番アイアンのロフト角が36度だとします。
これがひと昔前のスタンダードなアイアンのロフト角なのですが、最近のロフトの立っているストロングタイプだと28度がザラです。
この28度、スタンダードタイプで考えると、5番アイアンと同じロフト角なのです。
ロフト角が違うだけでシャフトの長さはほとんど同じですから、構えたときに違和感はないはずです。
そのためストロングタイプの7番アイアンが、本当は5番アイアンと同じだと思って使う人はいないでしょう
それでは飛距離を比較するとどうなのでしょう?
番手間のシャフトの長さは0.5インチですから、7番アイアンと5番アイアンでは1インチの差があります。
一般的にシャフトの長さ1インチで、飛距離は5ヤード違うと言われています。
そして番手間のロフト角の差は4度ですから、スタンダードの7番アイアンと5番アイアンでは8度変わることになります。
ロフト角1度が2ヤード差の計算ですから、およそ20ヤードの差があることになります。
アイアンの長さやロフト角は同じなのに飛距離が違う理由とは
スタンダードタイプの7番アイアンとストロングタイプの7番アイアンの飛距離を比較するときは、シャフトの長さとロフト角の違いに注目しなければなりません。
前項で説明したようにストロングタイプの7番アイアンのロフト角を、スタンダードタイプで比較すると5番アイアンと同じです。
そして2つの7番アイアンのシャフトの長さはほとんど一緒であるため、違うのはロフト角だけです。
番手2つ分の飛距離は20ヤードですから、ストロングタイプの7番アイアンはスタンダードタイプの7番アイアンよりも20ヤード、シャフトの誤差1インチを含めても15ヤード程度は飛ぶことになります。
ロングアイアンの長さが苦手の原因としている人にとっては、シャフトの長さを短くしてロフトだけ同じであれば、簡単に打てるということになります。
もしも7番アイアンのロフトを24度にできれば、4番アイアンのような飛距離さえ可能になるかもしれません。
現実にはストロングタイプのアイアンが市販されていますから、番手比較では従来の2番手差を見込め、より簡単に飛距離を出すことができるようになっています。
同じ長さのアイアンで揃えるとスイングフォームは一定になる
ストロングタイプのアイアンのように、同じ長さのシャフトでロフト角だけ変えると打ちやすくなるようです。
もしも長さを変えなくてもロフト角だけ変えれば打ちやすくなるのであれば、同じシャフトの長さのアイアンを揃えても、10ヤード刻みのアイアンショットが打てることになります。
シャフトの長さが同じであれば、スイングフォームはすべて同じで振れます。
これで10ヤード刻みに合わせたロフト角が再設定されていれば、打ち方に迷う心配もなくなるはずです。
しかもフルショットよりも短く打つときに、振り幅と飛距離の違いを把握できていれば、例えばどの番手を使っても、「ハーフショットで3ヤード減」といった数値で距離を抑えることができます。
実際に市販のアイアンセットでは、すべてが同じ長さの1セットで組んでいるものや、4本組み2セットのものもあります。
それを選べば非常にシンプルなスイングフォームになるので、迷いは少なくなることが予想されます。
ただその一方、同じ長さのシャフトを使うことで、それなりのデメリットも考えられます。
ロフト角が違う同じ長さのアイアンは使いにくい?
ロフト角が違う同じ長さのアイアンを使うと、同じスイングフォームになるため、シンプルなアイアンショットが期待できます。
一方で、同じ長さのアイアンセットにデメリットも存在します。
本来のアイアンヘッドは3番よりも9番のほうが重く作られているため、シャフトが同じであれば、9番アイアンに近づくほどヘッド側にバランスが偏ることになります。
基準となるシャフトの長さにもよりますが、ヘッドが効きすぎてフックする可能性が高まります。
仮にヘッドの重さを同じにしようとすると、サンドウェッジのフェース面と3番アイアンのフェース面が同じ大きさになるかもしれません。
人によっては「打ちやすい」と思うかもしれませんが、逆にサンドウェッジが3番アイアンのフェースのサイズになる可能性もあるならば「打ちにくい」ことのほうが多いはずです。
実際には中間の番手に、前後の番手の重さやサイズを合わせることになります。
先ほど説明したような市販されているモデルはそういったことを考慮し、見えない部分の肉厚を調整して、重量を揃え重心を設計しているようです。
すべてのアイアンの長さが同じにならない理由とは?
アイアンの長さをすべて同じにすると打ちやすいと感じるはずですが、意外にその便利なアイアンにお目にかかる機会はなく、あまり広まっていないように感じます。
ゴルフ界では便利なものや優れたものは、あっという間に世界中に広まるのに、同じ長さのアイアンが広まらないのには、それなりの理由があるからです。
アイアンショットは、ターゲットに向かうストレートボールだけを打つわけではなく、打ち出す角度やスピン量も番手によって求める役割は違ってきます。
シャフトの長いショートアイアンで打つと、通常の長さのショートアイアンよりも打ち出し角が大きくなりやすいです。
さらにヘッドの効いた長いショートアイアンを勢い良く振ると、打ち出すボールはフックする可能性が高くなるため、余分に右手が返らないようにするためにウィークグリップにしなければなりません。
場合によっては番手ごとで握り方を変える必要があるかもしれないわけです。
ドライバーとウェッジの握り方が違うのは我慢ができたとしても、アイアンの長さによってフックグリップ、スクエアグリップ、ウィークグリップと変えるのはマイナスに作用するかもしれません。
理論的には同じ長さのアイアンは、同じスイングができるのでミスショットがなくなるように感じますが、細かな部分でのフォローが必要になることが原因で広まっていかないのかもしれません。
アイアンの長さを同じに揃えるとスイングが複雑になる?
理論上は同じ長さのアイアンで揃えれば、スイングプレーンが同じになるのでスイングは簡単になります。
しかしながら実際には球筋を打ち分けるためのスイングの違いや、ヘッドの重さによるヘッドの効きの違いで、グリップの握り方を変えなくてはいけなくなると考えられ、長さの違うアイアンよりも複雑になる可能性がありそうです。