アイアンのシャフトの硬さを決めるときは、ドライバーのヘッドスピードを目安にすることが多いようですが、それでピッタリのシャフト選びはできていますか。
アイアンは距離を調節する道具ですから、必ずしもしなりやすいシャフトが必要なわけではありません。
そこでアイアンのシャフトの硬さの選びについて今一度考えてみましょう。
アイアンのシャフトの硬さを選ぶときにチェックする項目
アイアンのシャフトの硬さを選ぶときは、ドライバーのヘッドスピードを目安にすることが多いです。
ヘッドスピードが速ければ硬いシャフトを選び、遅ければ軟らかいシャフトを選びます。
ヘッドスピードの速さによってシャフトの硬さを変える理由は、シャフトのしなりを想定したものです。
ただしシャフトの硬さについて、「ヘッドスピードが速いからシャフトがしなる」と考えているとしたら間違っています。
シャフトのしなりはスイングスピードによるものですが、ヘッドスピードはスイングスピードにコックのリリースや体重移動などが加わったものだからです。
タイミングを合わせるコツさえつかめば、女子プロゴルファーのようにゆったりしたスイングスピードでも、ヘッドスピードを速くすることができます。
コックをリリースするとダウンスイングのシャフのしなりは解消されますが、このとき戻りが大きいとフックフェースになります。
そのためヘッドスピードの速さを基準にして、シャフトの硬さを選ぶわけです。
つまりダウンスイングの勢いでシャフトのしなりを決めるのではなく、シャフトのしなり戻りの大きさでシャフトの硬さを決めるわけです。
ドライバーとは違うアイアンのシャフトの硬さ選択
アイアンのヘッドスピードと、ドライバーのヘッドスピードは違って当然です。
長さが違うからです。
またドライバーのヘッドスピードを、アイアンのシャフトの硬さの目安にするのであれば、ドライバーと同じようなスイングをしていなければならないとも考えられます。
ドライバーはボールを遠くに飛ばすことが目的ですから、スイング中にヘッドスピードを上げるための工夫がなされています。
シャフトをムチのように使って大きなしなりを入れることで、インパクトでの衝撃力をアップさせたいからです。
単に勢いの良いスイングをするだけでなく、ハンマーで釘を打ち込むときと同じように左手首を上手に使って、ヘッドスピードを加速させます。
このコックをリリースするタイミングに合わせて、右足から左足へと体重移動を加えることで大きく飛距離を伸ばすことができます。
ところがアイアンのスイングでは回転軸を動かすと方向性が失われる可能性があるため体重移動はほとんどありません。
しかも飛距離を狙うわけではないので、コックをリリースするタイミングをインパクトに合わせる必要もないわけです。
アイアンにはシャフトの硬さが必要ないかも?
前項のようなことから、ドライバーのヘッドスピードを目安に、アイアンのシャフトの硬さを選んでも参考にならないかもしれません。
シャフトの硬さは、ダウンスイングでのシャフトのしなりが戻るときの、そのしなり戻りの大きさに影響を与えています。
勢い良く振り下ろせばシャフトはしなりますが、インパクトまでにそのシャフトのしなりを戻さないと、フェースが開いてスライスボールを打ち出すことになります。
ひとつの考え方としては、シャフトが硬ければダウンスイングでのしなり幅が小さいので、しなり戻りは小さくなるということです。
振り下ろす段階で、シャフトのしなりが少なければ、それだけ戻りも少なくヘッドのコントロールは簡単になります。
強いダウンスイングをするゴルファーにとっては、硬さのあるシャフトは扱いやすくなるはずです。
ところでアイアンをスイングするときに、シャフトのしなりを感じることはあるでしょうか?
普段のアイアンショットで、シャフトが軟らかくて引っ掛かるのは、極少数のゴルファーしかいないのではないでしょうか。
アイアンのシャフトの硬さはスイング幅や用途で決める
強振で有名なタイガーウッズですが、もっとも飛んでいた全盛期でもウェッジはRシャフトを使っていたと言われています。
タイガーの3番アイアンは、一般ゴルファーのドライバーよりも飛距離が出ていたので、アイアンのシャフトは彼なりのノーマルシャフトにしていましたが、ウェッジは強振する必要がないことから、他のクラブに比べて軟らかいシャフトでセッティングしていたというわけです。
使う用途に応じてシャフトの硬さを変えるのは珍しいことではありません。
少なくともドライバーのヘッドスピードを目安に、強振することの少ないアイアンのシャフトの硬さを選ぶのは間違っている可能性が高くなります。
一般的なアイアンは、番手間の飛距離を10ヤード差にしているものです。
7番アイアンの飛距離が140ヤードであれば、8番アイアンは130ヤードとなって、7番アイアンは131ヤードから140ヤードの範囲を受け持つことになります。
10ヤード刻みになっているのですから、無理に6番アイアンの145ヤードまで受け持つ必要はないはずです。
つまりアイアンは強振する機会がないということになります。
コックがポイントになるアイアンのシャフトの硬さ決め
アイアンのシャフトは硬いほうがヘッドコントロールがしやすいと言われています。
アイアンショットでも意識的にコックを使う場合には、インパクトの直前でリリースするので、シャフトのしなりとしなり戻りのタイミングは重要です。
しかしながらダウンスイングとともにコックをほどくようであれば、シャフトのしなりを戻すタイミングがありません。
まさに初心者がスライスするのと同じ条件になっているわけですが、おそらく初心者のころはフックフェースでセットして、インパクトの開きと相殺していたかもしれません。
そこから少しゴルフが上達してくると、アイアンショットではフェースを開いたり、フェードやドローをかけたりと、単に払い打つだけのスイングはしなくなるため、フックフェースで球筋をコントロールするのは不便です。
そこでシャフトのしなりが少ないように、硬さを求める場合があるということです。
フルスイングだと振り遅れてスライスする可能性はありますが、トップでの切り返しとともにコックのリリースが始まるスイングであれば硬めのシャフトが良いかもしれません。
シャフトの硬さは自分の好みで選べば良いの?
ゴルフの格言に「スイングはひとつ」という言葉があります。
これはすべてのクラブを同じフォームにするということではなく、同じリズムでスイングをするという意味です。
そこで番手によってシャフトの硬さを変えてしまうと、同じリズムでスイングができなくなってしまいます。
3番アイアンはフルスイングをするからSシャフトで、9番アイアンは距離調節をするのでRシャフトと変えてしまうと、リズムが狂ってきてしまう可能性はあります。
このリズムとは、1・2・3・4とカウントすることではなく、同じタイミングでコックをリリースすることです。
一般的にはコックを使ったスイングをするはずなので、リリースでのシャフト戻りが強いようなら硬さのあるシャフトにして、戻りが弱いようなら軟らかいシャフトを選ぶようにすべきです。
またノーコックのスイングをしていて、スイングスピードによってヘッドコントロールができていなければ、硬めのシャフトのほうが安心できる場合もあります。
ただシャフトの硬さは自分の好みにもよるので、握ったり構えたり、もしくは実際に試打をしてみて決めたほうが良いでしょう。
自分のスイングや好みに合わせるべきアイアンのシャフトの硬さ
アイアンはフルスイングする場合もありますが、距離調節をするショットのほうが断然多いはずです。
そうするとフルスイングしたときに丁度良いシャフトの硬さでは硬すぎることが考えられます。
そのためヘッドスピードを目安に選ぶのでなく、自分のスイングや好みに合わせたほうが良い場合が多いのではないでしょうか。