アイアンのライ角調整は上達速度にどのように影響するのか!

ゴルフ上達の鍵は質が高く内容の濃い練習です。

再現性の高いスイングを身につけるためには、数多くのスイングを繰り返し、体に記憶させることがとても大切です。

ところが、高い再現性を体が記憶し繰り返すことができても、アイアンのライ角をはじめとした機能が適切に調整されていなければ良い結果は伴いません。

その理由と調整方法の注意点を解説します。

ライ角調整はアイアンショットの精度向上に役立つ

アイアンのライ角調整と聞くと、「プロではないから必要ない」、「調整してもその差なんかわからない」などと聞こえてきそうですが、実は大きく関係します。

ゴルフスイングの形を決める要素は、骨格、筋力、柔軟性、などにより構成されています。

代表的なこの三つの要素は簡単には変えることができません。

したがって、ゴルフスイングの再現性は良し悪しがあるものの意外に高いのです。

スライスやトップなど様々なミスが出たとしても、基本的なスイングに大きな差はなく、自分の感覚で10cm以上アップライトに振ったつもりでも、実際は1~2cm程度です。

SWからロングアイアンまで、ライ角が基準に沿って整っていないと、アイアン全ての番手が同じ感覚で振れません。

ピッチングウェッジが感じ良く打てているのに、番手をあげた8番アイアンは上手く打てない、ダフるし曲がる、などの経験があるはずです。

もちろん、ライ角だけが原因ではないかもしれませんが、大きく影響している事は事実なのです。

新品のアイアンは必ずしもライ角が調整されているわけではない

グリップとヘッドにラップが掛かり、傷ひとつない新品のアイアン、手元に届くとだれでもウキウキしますよね。

クラブ組み立て用機材の進化により、ヘッドへのシャフト装着や、グリップ装着などの精度は飛躍的に向上し、ゆがんで装着されるグリップはほとんど見かけなくなりました。

ただしヘッド製造最終工程に近い研磨の段階は、技術者の方々が手作業でグラインダーに向かい、造形の微調整をされています。

この職人技が素晴らしく、ゲージを使用しながら指先の感覚と目視のみで、トップブレード、ヒール、ネックラインなどを修正していくのですが、工作機械のように正確です。

メッキに入る直前は、なんとも言えない光沢があり、そのまま大切に飾っておきたいほどです。

しかしながら、少し残念ですが大量生産のクラブの場合、製造工程の中に【緻密】なライ角、ロフト調整は入っていません。

もちろん、カタログデータから大きく逸脱する事はありませんが、外観の傷とは違い、数度の誤差は出荷基準から外れないそうです。

この数度の差が、球筋にどのような影響を及ぼすかを考えてみましょう。

アイアンのライ角が基準から1度ずれたら調整が必要

ライ角テスターという機械を使用し弾道の検証をすると、ライ角1度のズレで、100ヤードの場合約1mの誤差が生まれます。

つまりPWと9Iに1度の誤差が合った場合、PWはほぼストレートに打てるが9Iになると精度が落ちる、という現象が起こります。

もちろん、フェアウェイに平らなライなど存在せず、絶えず前上がりや下がり、左上りや下り、その複合と複雑に絡み合っています。

そのため少々の誤差は関係ないのではと思いがちですが、基準がしっかりと整っていれば、ショットの経験は基準通り正確に記憶されるのですが、間違った情報は間違って記憶されてしまいます。

少し前上がりの場面、PWと9Iの中間の距離をイメージしてください。

フルショットを選択しPWでショットした場合、少し左目に飛ぶことが予想できます。

ところが、9Iのライ角が1度アップライトだった場合、同じイメージで軽打したにも関わらずボールは大きく左へ曲がるのです。

大切なのは、アイアンすべての番手が基準通りの数値に調整されていることで、同じ感覚で振った場合、同じ結果が出ることが【予測】できることで、これが安心感につながり、上達を早めるのです。

つまり番手ごとに違う振り方をしていたら、全く上達は望めません。

アイアンのロフト角、ライ角、バンス角の関係は調整できるのか

アイアンには番手ごとのロフト角はもちろん、それぞれに適したライ角とバンス角が存在します。

このロフト角とバンス角の関係は、ヘッドを削るなどの加工調整をしない限り変化しません。

ロフトを一度立てればバンス角は一度減り、寝かせれば一度増える、といった具合で変化するからです。

このバンス角というのは見逃しがちですが、フェアウェイから打つことが前提であるアイアンの個性を決める重要な要素です。

ライ角を調整する際、当然のようにロフト角の確認をし基準に沿っていない場合、合わせることになりますがここが要注意です。

経験上、安価な調整費用を売りにしている工房は要注意、基礎知識があいまいで、ロフト角の計測方法さえあやしく、結果は散々なことがあるからです。

単純にロフト角だけに着目し調整してしまうと、設計者の意図に反したバンス角になり、機能を損ねる可能性があることを理解しておいてください。

アイアンのライ角調整を安心して任せられる場所は

大手チェーン店の場合、それなりの講習を受け資格を持った技術者が在任しており、知識と技術の不安はないと思いますが、依頼する場合の注意点を解説します。

一般的なゴルフ用品販売店には簡単な工房が付属しており、グリップ交換やシャフトの差し替え、アイアンのライ角やロフト角の調整を依頼することができます。

ライ角、ロフト角共にその計測方法ですが、ソールを基準に測るのではなく、フェースに刻まれているスコアラインとリーディングエッジを基準に計測するのが正解です。

そこでロフト角1度以上の調整が必要になった場合、バンス角との関係を理解していれば、ネックの調整方向に工夫が必要であることに気がつくのですが、理解が足りない場合、その工夫は望めません。

依頼をする前に、ロフト角の計測方法と、調整が必要になった場合のバンス角との関係について質問してみてください。

ここで解説した通りの計測方法と、バンス角の変化が与える影響についての回答があれば信頼が置けると言えますが、うやむやだった場合、調整の依頼は見送るべきです。

アイアンのライ角調整がもたらす最大の効果は

すべてのクラブが設計者の意図した機能を発揮できるよう調整されていれば、デリケートなアプローチショットから、ロングアイアンのフルショットまで同じ感覚で振ることができます。

振った感覚はもちろんですが、ライ角をはじめとした調整がうまく整っていると言う事実は、クラブに対する安心感につながり、体に伝わる情報の精度を上げることにもなります。

この感覚とショットの結果を数多く経験し、蓄積することが質の高い練習と言えます。

情報が正確であれば対策も容易で、誤った練習を繰り返すリスクを減らすことにもつながり、効率の高い練習を重ねることができるのです。

効率がよく、密度の高い練習を重ねるためにも、この計測と調整をおすすめします。

信頼が置けるクラブを手に入れる

ミズノ社のセミオーダーマッスルバックアイアン、養老工場で組んだ経験があります。

見学会に参加しましたが、素晴らしい環境と技術者の精度が高い手作業を目の当たりにし感動しました。

ライ角はもちろんロフト角やバンス角調整にまで気を配った作業でした。

多少の差はあるにせよ、すべてのクラブは同じような工程で作製されているはずです。

ご自身のクラブ、計測と調整をおすすめします。

愛着が増すと同時にスキルアップも望めるからです。