アイアンのシャフトの長さが身長に合っていないと、フックやスライスの危険性が高まると考えられます。
そのシャフトの長さは飛距離とも関係がありますし、またスイングフォームそのものにも関係します。
ここではアイアンを選ぶときの自分に合ったシャフトの長さについて考えます。
アイアンのシャフトの長さが有利に働くことはあるのか?
バスケットやバレーは身長の高い人が有利ですが、道具を使う野球やサッカーでも身長の高い人の活躍が目立ちます。
ゴルフの場合も活躍しているプロは大型化の傾向にありますが、必ずしも身長が高いから有利というわけではありません。
確かに身長が高ければ腕も長いでしょうから、肩からヘッドまでの長さを考えると多少は有利な部分もあることでしょう。
円のスイング軌道では、回転軸から遠いほど移動する距離が長くなるため、外周を回るヘッドはそれだけ速く動くことになります。
つまりヘッドスピードが速くなるわけです。
腕の長さと身長の関係についてはいろいろな統計結果があります。
その中で長袖シャツの基準となっているのが、Sサイズの袖の長さが57センチ、Lサイズが60センチとなっています。
シャツのサイズが身長とイコールにはなりませんが、このデータを参考にすると、総体的には身長の長さに比べて腕の長さの差は微々たるものだということが言えます。
この程度の差であればシャフトの長さで、十分に飛距離をカバーすることができますし、ましてアイアンの精度が身長に左右されることは考えにくいのではないでしょうか。
シャフトの長さを伸ばすとアイアンの飛距離はアップする?
ドライバーであれば飛距離が要求されるため、1ヤードでも遠くに飛ばしたいと考えることに不思議はありません。
しかしながらアイアンはピンポイントにボールを運ばなくてはいけないので、特別に飛ぶ必要はありません。
ターゲットポイントが150ヤードであれば、1ヤードの誤差もなくそのポイントにボールを落とすことが大事であって、155ヤード飛んでしまうとグリーンオーバーになるかもしれません。
つまり想定した飛距離の分だけ飛べばよいだけで、余計な飛距離は必要ないということなのです。
ところがショートホールのティーグラウンドで、自分は7番アイアンを選択したのに同伴者が9番アイアンを握っていると、なんとなく劣等感のようなものを感じてしまい、普段よりも番手を落として無理なショットをしようと考えることがありませんか。
結果がすべてだとは分かっていても、さらにアイアンは正確な距離が絶対だと理解していても、飛ばしたいと考える場合があるはずです。
この場合はロフト角が4度立っていて、シャフトの長さが0.5インチ長いだけで、番手1つ分をカバーできると考えられます。
アイアンのシャフトの長さに任せて飛距離を得ても意味はない?
アイアンは番手間のロフト角が4度刻みで、シャフトの長さは0.5インチ刻みになっているのが一般的です。
仮にソールに7番と刻印されていても、ロフト角が通常の7番アイアンよりも4度少なければ、6番アイアンと同じ打ち出し角になります。
さらにシャフトの長さが0.5インチ長ければ、単純に表記が違うだけで6番アイアンの飛距離になるわけです。
市販のアイアンでなぜそんな面倒臭いことをしているのかと言えば、アイアンでも飛ばしたいというニーズがあるからです。
この人気のアイアンはストロングロフトと呼ばれていて、スタンダードなアイアンの番手よりも1~2番手違う設定が多いようです。
もちろん構えたときには、違和感のない工夫がされているので、同伴者が7番アイアンを選んだときに9番アイアンを選択しても同じ飛距離を出すことができます。
アイアンの飛距離を競っても意味はないとという考え方がある一方で、2番手分の後れを取ると、自尊心が「もっと飛ばせ!」と言っているのかもしれません。
飛距離はシャフトの長さよりロフト角が重要
ドライバーは長さのあるシャフトを使うと、飛距離が伸びると言われています。
対してアイアンはロフト角で飛距離を設定しているので、番手間のロフト角は4度差が一応の基準となっていますが、ドライバーにはその基準はありません。
確かにハードヒッターの多くはロフト角の小さな9度以下を好むようですが、ロフト角が小さいことで飛距離が伸びるわけではありません。
飛距離の要素として、打ち出すときの初速と打ち出し角、そしてスピン量の3つが揃っていることが重要です。
この3要素のうちの打ち出し角は、14度から18度が理想と言われていますから、単純にロフト角9度でボールの側面を引っぱたいても飛距離は伸びません。
フェースの斜度が9度でも、アッパーブローで打ち上げることで5度高い14度で打ち出すことも可能です。
ドライバーのロフト角は、適正な打ち出し角に満たないので、この適正な角度で打ち出すことが重要なのです。
どんなにシャフトを長くして、ヘッドスピードを上げても、打ち出し角が足りなければ理想の放物線からかけ離れ、飛距離が伸びることはありません。
しかしながらアイアンのフェースには番手に合わせたロフト角あるため、その通りに打ち出すことができれば何も問題はないはずです。
すべてのアイアンのシャフトの長さを揃えたらどうなる?
アイアンのシャフトの長さは番手間で0.5インチ刻みなのですが、当初のシャフトの長さは飛距離に関係したことで間違いありません。
振り子のようなスイングをしていたわけですから、スイングアークの大きな軌道ほどヘッドスピードは速くなり、強いインパクトを与えることができるようになりました。
時代は進み、回転軸を中心とした円のスイングができるようになったことから、短いシャフトでも飛距離は出せるようになりました。
そうすると長さは飛距離とあまり関係なくなってきます。
仮に飛距離に影響があったとしても、それは極わずかなもので、プロの多くは短尺ドライバーで300ヤードをマークする時代となっています。
同じことはアイアンにも言えて、番手が変わってもシャフトの長さを変えずに、7番アイアンのシャフトの長さで統一しているプロ選手が現れました。
一定のスイングフォームでインパクトが揃うシンプルなスイングができるため、プロの中には世界ランクで上位の位置にいるほどの効果をもたらしているようです。
シャフトの長さを揃えたらシンプルなアイアンショットに!
アイアンのシャフトの長さを揃えることで、シンプルなスイングが実現できます。
ボールをスタンスの中心に置く7番アイアンのシャフトの長さを基準にすると、すべてのアイアンはスタンスの中心で構えることができます。
どちらかの足の上に体重を偏らせる必要もなく、アドレスのときの回転軸をそのままに、スイングが完結できます。
1つのスイングができれば、あとはロフト角が勝手に飛距離を決めてくれますし、スピンの回転数も特別なコントロールをしなくても良くなります。
ショートアイアンになると高弾道でバックスピン量が増し、誰もが憧れるキュルキュルと回転してすぐ止まる、欲を言えば戻ってくるようなボールを打つことができます。
その理由に通常のショートアイアンよりもシャフトが長いため、ヘッドを効かせたショットが可能になることがあります。
一方でロングアイアンは、ヘッドスピードが落ちる可能性はあります。
しかしながらシャフトが短くなったことで、スイートスポットでとらえる確率が高くなり、短くなったシャフトと相殺され、大きなマイナスになることはないでしょう。
アイアンの軌道を安定させるためにシャフトの長さをこだわる
アイアンはシャフトの長さを利用して、飛距離を競う道具ではありません。
しかしゴルファーの矜持として、飛距離を求める場面がないわけでもありません。
その場合はロフト角の立ったストロングアイアンを使えば良いだけです。
つまりアイアンにとってシャフトの長さは距離ではなく、スイング軌道を安定させるためのものだと考えるべきでしょう。